鶏口牛後

こめかみに、いつ誰に引き金が引かれるか分からないピストルを、ずっと突きつけられた状態…。大学が、ひいては自分の雇用が、今置かれている境遇を端的に表現すれば、このようになるだろう。経営、運営が様々な面で危機的であり、いつ何がきっかけで「終わり」を迎えても不思議ではないのだ。その厳しい現実の最前線が見えるところに今春から異動したことで、今まで抱いていた漠然とした不安が、具体的かつ致命的なものに変化して、自分は平静ではいられなくなってしまった。10年後のことを考えて仕事をしたいのに、現実には明日の保証さえない。そんな不健康なストレスがかかる中で毎日長々と残業するのは虚しいものだ。仕事以外の生活で取り組みたいこと、取り組む必要があることに取り組めなくなる「ワーク・ライフ・コンフリクト」に陥っている。ただ、いくら経営状況が厳しく、労働条件に矛盾や不満はあるとはいえ、今の仕事をやめる、というのもまた到底考えられないことだ。これまで4年間働いてきたからそれなりに愛着はあるし、自分に課せられた困難な職務を成果の見える形でやり遂げたいという責任感もある。何より、自分の力で自分の手の届く範囲のものを変えられる程度の組織の小規模さが、自分の性には合っている。大規模な組織は、組織の存続は保証されていても、出る杭は白い目で見られて行動の自由が効かないということも少なくないだろう。自分は「鶏口となるも牛後となるなかれ」というのが就職活動をする以前からの信条だったので、でかい組織で言いたいことも言えず汲々としているよりは、小さい組織でリーダー格になって大手を振るえるほうがずっといい。何か突き抜けた能力を持っているなら話は別だが、一般に職の安定と、職場での行動の自由度というのは、トレードオフの関係にあるのかもしれない。ならば、色々な自由が許されている今の自分が、厳しい環境に置かれていることにも、それなりに納得がいく。現状に問題があるなら、それは自分の行動によって変えて行くしかないし、それは不可能なことではない。都合良く現状を変えてくれる他者の存在など、自分は期待しない。今は募る不満をばねに蓄えて、いずれしかるべき場面で「もっとこうするべきだ」とぶつけてみたいと思う。

(携帯+PC、30分+40分)