久々に、強烈な印象を残す類まれな映像作品に出合った。故・今敏監督の1998年公開のアニメ映画「パーフェクトブルー」を見ての率直な感想だ。現実と虚構が交錯するサイコスリラーのストーリーがとにかく面白く、カットや演出も巧みで、設定も入念に作り込まれており、初監督作品とは思えないほど完成度が高かった。自分の心が作品世界にすっかり入り込んでしまって、映画が終わった後は、しばらく脱力し放心状態に。そこから現実世界に復帰するのに、1~2時間はかかったのだった。本作の鑑賞による鮮烈な印象と、鑑賞後も消えない後味は、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」(1995年、押井守監督)や「新世紀エヴァンゲリオン劇場版 Air / まごころを、君に」(1997年、庵野秀明監督)を見たときに匹敵するものだった。いずれも90年代後半の手描きセル画のアニメ作品であり、見る前と後とで、自分の世界観が不可逆的に書き換えられてしまうほどの「問題作」(いい意味で)だった。この時代にいかに傑出した作品が多かったかを訴える自分の中での証左に、本作が新たに加わることになったのは言うまでもない。本作の物語にはここではあえて踏み込まないが、映像的に過激なシーンも多いので、自分のように家族が出払っている平日に自宅で一人で見るのが正解だろう。自分は、先週から全国でリバイバル上映されているという記事を先月末にネットで目にして本作のことを初めて知ったクチだ。近所のGEOで「どうせあるまい」と思って探してみたら幸運にもDVDを見つけ、すぐに帰宅して昼下がりから見始めたが、もし劇場で見ていたら周りの観客が気になってここまで作品世界にどっぷり浸かれなかったことだろう。とにかく、「大人こそが見るべきアニメ」ということで、自分と同年代以上の「いい大人」にオススメしたい不朽の名作である。
(30分)