ZARD

老若男女を問わず、誰もが発信者となり視聴者となる、動画サイト全盛の現代において、自分はそれをほとんど見ていない。調べ物やネットニュースを見たときなど、何かの弾みで週に1、2本見る程度だから、ほぼゼロに等しい。若い世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)重視」だから、1.3倍とかの早送りで動画を視聴するとか、再生時間が長いと見てもらえないとか、映画を2時間見るのは面倒だからと10分にまとめた違法なファスト動画が再生数を伸ばしているだとかいう話をよく目にし耳にするが、自分はそもそもネット上の動画は見ないことにしている。有限の人生で、無数かつ無限に存在する無料動画を見ることに時間を費やすのは、99%以上無駄でしかないからだ。それは、大学生時代に1日の半分を「ニコニコ動画」を視聴して無為に過ごすというネットジャンキー生活を送り、結果として深い後悔に苛まれた自分自身の体験に基づく反省からの考えであり、今後もおそらく変わることはない。玉石混交のネットコンテンツの中で、動画はもっとも中毒性が高く、受動的で、連続再生される分だけ時間浪費効果が高い。多くの人がスマホを片手に動画に夢中になるのも、むべなるかなだ。大学生時代にすでに一生分に等しい膨大なネット動画を見てしまった自分にとって、動画サイトは時間を奪う「玉手箱」に映る。

 

そんな自分が、ごくまれにYouTubeで見る数少ない動画の一つが、アーティストの公式チャンネルに掲載されたミュージックビデオ(MV)である。今日は別の動画を見た後に、たまたまZARD「負けないで」が自動的に再生され、思わず見入ってしまった。1993年のリリースから今年で30周年を迎えるのを記念して、公式チャンネルで無料で公開されているZARD坂井泉水)本人が歌っているシーンの動画である。ZARDはテレビにはほとんど出演しなかったと言われているので、とても貴重な映像だ。ZARD全盛期の90年代に小学生だった自分は、まさに「ZARDど真ん中」世代。スラムダンクに、ドラゴンボールGTに、名探偵コナンにと、アニメソングのOP・ED曲では高頻度でZARDの曲が使われていたし、親の運転する車の中で、カセットテープから流れるZARDの曲をよく聴いていた記憶がある。特に「負けないで」は、マラソン大会のときに頭の中で必ず流れていた定番曲で、非常に思い入れが深いものがある。歌詞は当然全て覚えているし、カラオケに行けば90点以上を取る自信もある。そんな曲に思いがけず遭遇し、また全盛期の坂井泉水の映像を目にして、心の中は一瞬にしてZARD一色に。その興奮のあまり、今回の記事をしたためてしまったのだった。映像の中の彼女の輝きは今なお眩しく、その歌声は時代を超えて人々の心を励まし、支え、勇気づけ続けている。動画のコメント欄からそれを実感し、自分は今でもZARDのファンであることを改めて確信したのだった。

 

そういう偶然もたまにはあるもんだから、動画サイトは隅に置けない。

 

www.youtube.com

(45分)