ニコ生コンサート

今日は18時からクラシックのコンサートを鑑賞してきた。「第27回ファミリークラシックコンサート〜ドラゴンクエストの世界〜交響組曲ドラゴンクエストⅤ」天空の花嫁」という公演で、毎年8月上旬に東京芸術劇場で開催されているイベントである。自分はこれまでにも2006年と2010年の2度参加している。しかし、今年はこれまでとは一味違っていた。コンサート会場に足を運んだわけではなかったからだ。ネットを利用して、自宅の自室にいながらして、東京の池袋で行われたコンサートの「生中継映像」を鑑賞したのである。これはニコニコ動画の「ニコニコ生放送」というサービスを利用したもので、現地に置かれた複数台のカメラを通してリアルタイムで会場の演奏と映像を視聴することが出来ることになった。公演のチケットが手に入らず、「今年はダメか」と諦めていたところ、今月1日にたまたまニコ生で放送されることを知り、すぐさまネットのチケットを購入。1500円だったが、ためらいは一瞬もなかった。視聴をスムーズにするため、2年ぶりにプレミアム会員にも登録した。こうした形でコンサートを鑑賞することになるのは初めての経験だった。コンサート当日の今日は、午後から年休を取り、先週急きょ注文し一昨日に届いたばかりのヘッドホンを箱から出して使い勝手を確認。ヘッドホンをPCに接続し、PCからTVに映像を出力してTVの前で鑑賞することにし、機材をセッティング。開場時刻の17時半からは、TVの前に陣取って開演を待った。ヘッドホンは、春頃から欲しいと思っていたソニーのMDR-1Rで、価格は約16000円。春先よりは安くなっていたと思うし、東京までの往復の新幹線代が浮いたと考えれば、そう高い買い物とは感じなかった。せっかくオーケストラの演奏を聴くのだから、中途半端な音響機器ではいけないと思ったのである。

コンサートは18時5分から始まった。映像は鮮明で、ドラクエの全曲の作曲者であり、ファンにとっては神様のような存在である、すぎやまこういち先生の姿が大きくはっきりと映し出されたので、まずそれを喜んだ。現地だと御姿がほんの小さくしか見えないので、テレビで表情までしっかり見られたことはとても新鮮だった。特に、指揮者として客席に背を向けているため、普通だったら絶対に見られない演奏中のすぎやま先生の表情を見られるのはとてもよかった。すぎやま先生は御年82才とご高齢だが、指揮は繊細で時に力強く、MCもユーモアを交えてしっかりと話されていて、まだまだお元気であることを確かめることが出来た。演奏は大迫力で、オーケストラが奏でる美しい音色にひたすら感動の嵐だった。今回の楽曲はドラクエ5のものだったが、自分がSFC版をプレイした02年当時のことを思い出しながら、音楽に耳を傾けた。RPGの音楽というのは、ストーリーに色を添えるものだ。それゆえ、音楽を聴けば、ストーリーの記憶とその当時の感動が蘇る。だから、高揚感や、悲しみや、嬉しさといった感情が溢れだし、胸がいっぱいになるのだ。聴いている間じゅう、ずっと胸が熱かった。それを一層盛り上げたのが、映像の下に流れたほかの視聴者たちのコメントだった。あのイベントが・・・キャラが・・・ボスが・・・というコメントを見るたびに記憶が蘇ったし、ドラクエへの愛に溢れるコメントの数々に思わずこちらも顔がほころんだのだった。見知らぬ誰かと感動を共有するこのライブ感は、ネットなくしては決して実現しなかっただろう。改めてすごい時代になったものだと感じたのだった。プログラムは間に休憩を挟んで二部構成になっており、プログラムの終了後にアンコールで3曲が演奏された。アンコールは、ドラクエ2と3のエンディング曲が立て続けに演奏されるというあり得ないほどの豪華な組み合わせで、誰もが驚嘆したのは間違いない。どちらか1曲だけでも名曲中の名曲でお腹いっぱいだというのに両方きて、しかも大トリが3のエンディングの「そして伝説へ」だったものだから、聴衆の興奮は絶頂に達した。自分も涙が枯れ果てるほどに感涙してしまって、ドラクエという作品の素晴らしさをただただ再認識させられるとともに、このコンサートを鑑賞出来たことの喜びをかみしめたのだった。アンコールが終わり、閉演したのは19時50分。あっという間の2時間だった。


やっぱりドラクエというのは、自分にとってかけがえのない存在であり、ドラクエこそがわが人生なのだということ、それは疑いようもない真実なのだと今回改めて実感した。自分を見失っているように感じるのは、日々の生活にドラクエ成分が足りないからに違いない。かつて愛したドラクエの世界にもう一度身を置くことで、自分のアイデンティティを取り戻していこうと決意するに至った。ニコ生でコンサートを聴けて本当によかった。自分の言葉ではうまく説明することが出来ないが、演奏も映像もコメントもとにかく一つ一つが全て輝いていたのだ。それらが一体となって一度きりの特別な感動をもたらしたのである。今日はつくづくいい日だった。




↑終了後のアンケート。「とても良かった」が99%という恐るべき高評価が、今回の公演がいかに素晴らしいものであったかをはっきりと物語っている。

(80分)