ツーリング:2013/8/10

今日の午前、職場の同僚二人と一緒に自転車でのツーリングに出かけた。全国で40度前後の気温を観測する猛烈な暑さの中、朝から滝のような汗をかきながら自転車を漕いできた。しかも走ったコースはほぼ全てが山の中で、40kmの道中で標高差100〜300mの上り坂を4回乗り越える(いわゆる獲得標高(正確には累積標高だが、以降本ブログでは「獲得標高」と表記する)は約700m)という、なかなかに過酷なものだ。これに土曜日の朝から、好き好んで挑戦するのだから、常人にはおよそ理解しがたい「変態行為」というほかないだろう。自転車は本来大衆受けしない孤独な趣味であり、極めてストイックなスポーツである。そんな「変態野郎」が3人も集結した今回のツーリングについて振り返ってみたい。



朝8時10分、集合地点のローソンに到着すると、同僚Bが待っていた。集合時刻は8時だったので、自分は10分の遅刻だった。しかし、言いだしっぺの同僚Aは自分より更に10分遅刻した。土地勘がないので迷ってしまったらしい。同僚と自転車ツーリングに行くのは今回が初めてだ。それはほかの二人も同様で、特にBは先日初めてロードバイクを買ったばかりであった。それぞれの体力差がどの程度か、どれくらい走れるものなのかは未知数である。そのため今回は「お試し」ということで、Aが40kmの短めのコースを設定したのだった。今回のルートにはコンビニがなく、途中での補給が期待できないことから、最初にここで買い物をした。自分は飲み物2本と補給食(ミニあんぱん5個入り)を購入。飲み物の1本は車体のボトルケージに取り付け、残りはリュックサックに放り込んだ。停止、右左折等のハンドサインを確認したところで、8時28分に走り出した。



さて、コースの序盤は、田んぼにはさまれた広々とした道路を進んだ。すでに緩やかな上り坂だったのだが、5kmほど進んだところで早くも山に突入した。路側帯は消滅し、徐々に斜度がきつくなった。3速あるフロントギアはローに入れっぱなしになり、青空ではなく少しかすんでいるながらも強い日差しが照りつける中、あまりの負荷に体中から汗が噴き出した。最初の上りで標高ほぼ0mのところから300mまで駆け上った。この上りがもっとも長かったのだが、まだ序盤で体力が十分だったことからそれほど苦痛は感じなかった。登るに連れて山の中に作られた棚田の鮮やかな景色が飛び込んできたし、道端に咲いているヒマワリやアジサイも目を楽しませてくれた。そういった景色の変化を楽しみつつ、上り坂をゆっくりと走った。




スタートから40分後、道路脇に東屋を見かけたので、そこに飛び込んで最初の休憩を取った。各自が汗をぬぐい、水をがぶ飲みし、補給食をほおばった。暑い、けど楽しい、というのが共通の感想で、みな表情は明るかった。自分は休憩中も腰は下ろさないように注意した。一度腰かけてしまうと、体が重くなるような気がするからだ。今回のコースは、国道と県道を走り、複数の峠を越えながら山の中をぐるりと回り、最終的にスタート地点に戻ってくるというルート設定で、総距離は40kmある。自分の自転車は7年来使っている入門用クロスバイクだったが、ほかの二人はロードバイクで、フレームがカーボンだったり、ホイールがデュラエースだったりと本格的で、結構なお金を投じているようだった。その上に自分は、不要なリアキャリアやスタンドをつけていて、二人に比べ車体はかなり重かった。走る上では不利だったが、練習だと思えばこれはこれでよかった。また出で立ちは、アイウェアとヘルメットをつけている点は共通だったものの、自分は半そでにハーフパンツというラフなスタイルな一方、ほかの二人は長袖シャツにレーパンという「いかにも」な格好であった。見た目的には少しアンバランスな三人組であったが、自転車好きという点では一致していたので、休憩時等にはお互いの愛車や機材、経験談等の話で盛り上がった。そこは車やバイクのツーリングと変わらないが、自転車がそれらと決定的に違うのは人間の肉体を動力にして走る「スポーツ」であるということだ。同じ苦しさを共有し、共に乗り越えるというところに、大きな醍醐味がある。みなそれを感じていたのだと思う。


休憩後、再び走り出すと、直後に下り坂が始まった。峠を登り切ったのだ。待ち待った下り坂である。風を切って坂を駆け下りるのは何とも気持ちが良かった。上り坂の苦労が報われた思いがした。



そんなことを何度か繰り返しながら走った。途中、フロントギアのチェーンが脱落するトラブルがあった以外は、道に迷ったり、仲間がはぐれたり、転倒したりといったトラブルもなく、順調に走り続けた。最後に登った峠は斜面も険しく、疲労が出てきて体力的にもきつく、肉体的な限界を感じそうになったが、自分だけ立ち止まる訳にはいかないという一心で、ペダルをこぎ続けた。一緒に走る仲間がいればこそ、諦めないで走れたのだと思う。そうして峠をついに越えたときの達成感と言ったら、それはもう格別だった。下りの途中で自販機を見つけ、買って飲んだジュースの冷たさとうまさも最高だった。




↑こんな山奥まで、自分の足だけでたどり着いたということに自信を感じた。


下り坂を一気に駆け下りると、最初に通った国道に合流した。ぐるりと回って戻ってきたのである。Bは「もう一周するか?」と冗談を言ったが、さすがにかなり消耗してきていたし、十分走ったという充実感があったので、その提案は受け流して、予定通り下山する方向を選んだ。そして、11時12分、スタート地点のローソンに到着し、無事ゴールした。2時間45分ほどの短いツーリングだったが、とても中身の濃い時間を過ごせた気がして自分は大満足だったし、それはほかの二人にとっても同じだった。疲れてはいたが筋肉痛はなく(翌日以降も普通だった)、やりきったという清々しさと達成感に全身が包まれていた。こうして今回のツーリングは成功に終わり、1カ月以内に必ず次回のツーリングを決行することを約束して、11時半前に解散した。家までの帰り道、普段だったら、遅く起きてぼーっとしていたら終わってしまう土曜日の午前が、こんなに充実したものになるなんて、何て素晴らしいんだ・・・と自分はテンションが上がりっぱなしだった。



↑今回のコースの標高図。ピークは4回あった。


自転車は一人でも楽しいが、みんなで走ればもっと楽しい。その事実を強く実感した、真夏の出来事だった。

(120分)