コタ寝の冬

今年の冬の明らかな異変、それは夜にベッドではなくコタツで就寝するケースが増えたことだ。これを自分は「コタ寝」と呼んでいる。試しに日記のメモをもとに数えてみたところ、1/15〜2/14の31日間のうち、19回はコタ寝だった。なんと3日に2回はコタ寝をしていたのである。内訳としては、深夜に目覚めてベッドに移動したケースが14回、朝まで完全にコタツで寝続けた「完全コタ寝」が4回、不明が1回となっている。こうした統計が取れること自体も半ば呆れた話だが、どうしてコタ寝ばかりになってしまうかという理由は、もっとトホホな事情による。

その原因は、ズバリ妻からの2つの攻撃である。1つは、妻の就寝時に横に自分がいると邪魔だから、一緒に寝るな、といわれることだ。妻はベッドで寝るときにスマホYoutubeの動画を見たり漫画を読んだりしていることが多く(寝る前にバックライトの強い光を浴びたら眠りが浅くなりそうだが)、その場に自分がいると気が散って嫌だというのが理由らしい。ただ、妻の就寝時刻(ベッドに入る時間)は23時ごろで、自分はそれより遅い時間のほうがしっくりくるので、就寝時刻がバラバラなこと自体は問題ではない。夫婦関係としてどうなのかという指摘もあるだろうが、かつて一緒に寝ることを習慣づけていた頃は、むしろ寝室で突然妻がヒートアップしてトラブルに発展することが多かった。自分は恒常的に睡眠不足なので、ものの3分で眠ってしまうが、妻は寝付きが悪く、なかなか眠れないタイプである。そのためうとうとしながら色々なことを考えてしまい、その中で自分に対する不満や不安が頭に浮かんできた場合に、前触れもなく噴火してしまうことがしばしばあった。過去の感情が再現されて起こるもので、今目の前で具体的に起きている問題が原因ではないことがほとんどなので、自分では解決しようもなく、謝ってみたところで噴火はまず収まらない。ひたすら一方的に飛んでくる噴石、押し寄せるマグマに攻撃されるしかない。結果的に自分は大やけどを負い、寝室から追い出される羽目になる。あまりにも不条理なので以前は抵抗したこともあったが、火に油を注ぐだけでしかなく、壁を蹴ったら穴が開いてしまって大変なことになったりもした(2019年12月)ので、ガンジーよろしく無抵抗主義に転じざるを得なかった。こうした悲劇を回避する意味でも、妻の方から予め退去勧告を受けるのは、むしろ歓迎すべきことなのである。それゆえ、先に寝室に入った妻が眠ったであろう時間まで、リビングのコタツで待つことになるのだが、急速に押し寄せる睡魔に太刀打ちできず、30分から1時間後にはコタツでそのままバタンキューしてしまうという訳だ。

そしてもう1つの原因は、妻がベッドの自分の掛け布団をぐちゃぐちゃにする嫌がらせにある。寝室から追い出されるようになった代わりに、自分が出ていったあとに、重なっている複数枚の布団をまとめて、ぐちゃぐちゃにひっくり返されるのだ。床に放り投げられるパターンもあるし、ひどいときは2階の階段から階下に投げ落とされることもある。これが妻のストレス発散になるらしいが、やられるほうはたまったものではない。すんなりとスムーズに寝床に潜り込むことが到底不可能な状態になるのだ。こうなった布団を妻が寝たあと、暗い中で明かりもつけずに、寝られるように整えるのは大変なことだ。この嫌がらせが、妻の就寝を待って自分が眠くなってきたころに、あるいはコタ寝から深夜に目覚めたときに、ベッドに移動するのを躊躇わせるのに、絶大な効果を発揮することになる。

こうした理由で、今年の冬はコタ寝の夜が多発している。一応枕は使っているし、薄いこたつ布団も敷いてはいる。しかし、コタツは就寝環境としては非常に劣悪である。コタツの電源は基本的に切っている上、ほとんど下半身しかコタツに入らないのでフリースの上着を着ていても寒い。また、コタツが窮屈なので寝返りは全く打てず、背中のみならず全身が凝り固まる。深く眠れないのでレム睡眠がちになり、おかしな夢をたくさん見る。こうして、疲れ切った状態でコタ寝明けの朝を迎えることになる。かくいう今朝も完全コタ寝であった。間もなく雪も解け、春が来るが、暁を覚えない安眠が訪れるかは定かではない。

(60分)