金曜の夜

金曜の夜は、1週間で唯一、自分の時間を作るために夜更かしをする。妻が就寝する23時頃がそのスタートだ。

 

この時間に、特に何かすると決めている訳ではない。むしろ、何もしないことのほうが多い。頭をある意味で空っぽにして、何となくダラダラと過ごすだけ。でもそれが、きっと、心の安定を保つために必要な時間として機能しているのだと思う。日々の生活に追われ、会社員として、父親として、夫として、それぞれの場面場面で自分に課せられた役割に徹することだけを必死で頑張っていると、いつの間にか本来の自分の姿を見失いがちだ。自分が本当にしたいこと、喜怒哀楽の感情、将来への希望…そうした心の声が聞こえなくなってくる。そうしたガチガチの心を解きほぐすために、何もせず、ただボーっとして、自分の声に耳を傾けるのだ。

 

さてこの時間、自分はテレビをつけることが多い。「ドキュメント72時間」や、「金曜日のソロたちへ」などの番組をなんともなしに見る。特に72時間は、定点カメラに切り取られた市井の人々の人間模様が、時代の映し鏡のようで引き込まれるものがあり、自分のお気に入りの番組である。この番組をいつから見始めたか覚えていないが、少なくとも2014年5月放送の「トランクルーム もうひとつの秘密の部屋」の回は見た覚えがある。また、読書会用の本を読んだり、スマホでネットサーフィンをしたり、自分にとって高級品である缶コーヒーで一服したりすることもある。そうして眠くなってきたところで、だいたい25時頃にベッドに入り、自分時間は2時間ほどで幕を閉じる。

 

かつてあんなにも喧しかった自分の心の声は、今やすっかり鳴りを潜め、ブログの奥深くに刻まれているだけの化石になりつつある。でも、それが完全に消えてしまったら、自分の心は死んでしまったことになるし、人間として生きる意味はなくなってしまう。それは避けねばならない。静かに自分ひとりになるこの「儀式」を通じて、自分の声が再び大きくなり、それがブログにまであふれ出す日が来ること。それが今の自分の、数少ない願いの一つだ。

 

(60分)