メメント・モリ(取捨選択 その6)

多くの人が予想だにしなかった困難に見舞われた2020年だったが、自分にとっては命を蝕む非常なストレスと日常的に戦い続けた1年だった。そしてそれは例年通りの1年ということでもあり、1年前に残り10年と宣言した自分の寿命は延びることなく、残り9年にカウントダウンが進んだのだった。

 

ラテン語メメント・モリmemento mori)、日本語で「死を想え」という言葉が、近ごろよく自分の耳元で聞こえてくる。常に来たるべき最期を見据えて、そこから逆算し、今やるべきことは何かを考えよ、と自分に促す。その声に突き動かされて、今年も多くのモノをネットで売却して手放し、取捨選択を進めた。バイオハザード10周年記念の予約販売の切手(2006年購入)、少年時代に蒐集していたテレホンカード30枚超(1998年頃〜2002年頃購入)などは思いがけない高値がついたし、ゲームボーイ専用のポケットカメラポケットプリンタ・通信ケーブル(1998年購入)など微額ながら買手がついたこと自体に驚いた品もあった。取っておいても使いどころがない、二度と使うことはないと思われるモノは、ヤフオク!とAmazonマーケットプレイスでどんどん売った。

 

その中で自分にとって最も大きな転機となったのは、PerfumeのCD/DVD/blu-rayをほぼ全て売却したことだった。アルバム、シングル、ミュージックビデオ、ライブ映像など約25枚ほどあり、一部は未開封のままのものもあった。Perfumeに心酔してこれまで発売のたびに買い集めてきたものだったが、この1年ほどの間に自分でもびっくりするほどPerfumeへの関心が薄れてしまい、このまま持ち続けても仕方がないと思って手放すことにした。20枚ほどはセットにしてまとめ売りしたのだが、手元に残ったのは1000円ほど。叩き売りといっていい状態だった。だが、売るのに決心はいらなかった。CDを手に取ってPerfumeのことを考えても、心が全くときめかなかったし、ライブ映像をもう1回観たいという気持ちも起きなかったからだ。Perfumeの名誉のために言えば、彼女たちの輝きは今なお眩く、素晴らしいアーティストであることに変わりない。だが、自分の目にそれが見えなくなってしまったのである。CDを手放したことで、自分はもはや名実ともに熱心なPerfumeファンの地位を失った。これが自分にとって今年最大の取捨選択であった。

 

掘り出し物の「鉱山」である実家の自室(今は母親に実効支配されている)にはまだまだ有望な鉱脈が残っている。しかし、余計なものはほとんど売りつくし、残るはいよいよ自分の核心に関わるものだけになってきた。今回のPerfumeがその第一号になった訳である。死ぬまでにもう一度それを楽しむことがあると思うか、パッケージをまじまじと見つめて心がときめくか…。それを基準にして、時に表皮を削る痛みを感じながらも、自分の本質を剥き出しにするような「自分を映す鏡」だけを手元に残していきたいと思う。

 

↑自分が唯一参加したPerfumeのライブ映像だけは、まだもう少し手元に残すことにした。

 

(55分)