余命10年からのリスタート

このブログの開設から、10月10日で丸10年を迎えた。2009年に当時大学4年生だった自分が触発され、ブログを始めるきっかけとなった友人たちのブログは、遙か昔に更新停止または閉鎖され、現在まで続けているのはいつしか自分だけになった。大学生から社会人、そして結婚し、子供を持つ親の身に・・・と、この10年間で自分を巡る環境や心境も絶えず変わり続けてきた。そんな激動の中でも、今もなおこうして、細々とではあるが書き続けているということは、ブログが自分の生きてきた足跡を辿る証人として、それだけ重要な位置を占めてきたということにほかならない。

 

思えばこの10年間、ブログの更新のことを全く考えない日は、ほとんどなかった。自分が見聞きし、体験し、感じたことを、何としても書き残さないといけない。未来の自分のために、それらを自分の頭の中から外部記憶へとアウトプットしないといけない。そんな、使命感とさえ呼べるような感情に突き動かされ、何とか時間を工面しては、パソコンやガラケースマホでせっせと記事を書き更新してきた。少なくとも5年ほど前までは、それが自分の「行動原理」として確固たる存在感を放ち、機能していた。その原動力となっていたものは、おそらく2つ。ひとつには、この世界のことをもっと知りたい、あらゆることを自分自身で体験してみたいという強い好奇心、いわゆる「ファウスト的衝動」があったこと。それは、この世界への愛着とも言い換えられる。自分の所有物をなかなか捨てられない(保育園児の時に描いた絵が5年ほど前まで残っていたほどに)という自分の幼少時からの性格も、この世界への愛着に通底しているのだと思う。もうひとつには、自分の人生を記録することで、生きた証をこの世界に残したい、時の流れが自分の人生を風化させていく「忘却」という摂理に抗いたいという思い、いわば「生への執着」があった。それは唯一無二で一度限りの自分の人生を大切にしたいという思いそのものであり、自分の生物としての本能が記録という行為に強く表れたものと言える。そのため、ブログ開設以前から、自分は記録という行為に非常にこだわってきたし、断続的だったり形式を変えたりしつつも、様々な種類の記録を残し続けてきた。これらを整理すれば、自分の行動原理は「ファウスト的衝動⇒思考・行動⇒生への執着⇒ブログの更新」という流れになっていたと言えると思う。ブログの更新によって、頭の中の情報が整理・外部化され、ある意味でリセットされることで、自分の関心のフォーカスがまた別の事柄に切り替わり、新たな思考・行動につながっていくという正のループがそこには確かに存在していた。

 

だがそれも、もはや過去の話になりつつある。自分で自分の時間と行動をコントロールできない身になって以降、自分の興味関心を最優先にするファウスト的衝動は弊害しか生まず、数多の挫折の果てに徐々になりを潜めていった。また、生への執着も同じように希薄化の一途を辿り、手帳や日記に何もコメントを書かない日も多くなっている。昔は「これができるようになりたい」「これをやるまでは死ねない」という目標や理想像がいくつかあったが、今はそうした一切のこだわりは意識の外に葬り去り、日々に流されるまま生きているような状態だ。そうなると、このブログの存在意義も、次第に揺らいで行かざるを得ない。果たしてもうこのブログは、役割を終えたのか、そんなふうに自問せざるを得ない。

 

だから、自分はブログ10周年のこの節目に、こう宣言したい。「自分の余命は、あと10年。2029年に自分は死ぬ」と。これには、2つの意味がある。ひとつは、人生の期限を区切ることで、時間の価値を高め、やるべきことの優先順位を明確にしよう、実践につなげようという戦略だ。人生100年なんて言われると、時間がまだあるからやるのはいつでもいいか、というような気がしてくるが、残り10年しかないとなれば、やりたいこと、やるべきこと、その中で実際できることを必死で考えて取り組もうという気持ちも湧いてくる。時間を大切にしようと強く思うようになる。そのためのカンフル剤として、リミットを設定するということだ。もうひとつは、自分の残り時間を意識し、健康に留意することで、できるだけ精神と身体の寿命を引き延ばそうといういう戦略である。どういうことかというと、今の自分が相当消耗していることを正しく自覚しないと、ひょっとするとあと10年以上生きることはできないかもしれないという危険があるのである。もっと、自分の心身を大切にし、心も体も積極的に動かして、健康を増進しよう・・・そう自分自身に訴えるためのメッセージということだ。実際、10年後は42(死に)歳になる年だし(ただし数え年の大厄だとその前の2028年)、その懸念を払拭する意味で、今から終わりを意識し、対策していくに越したことはない。当然、この余命は、突破することが目的である。

 

もっとよりよく生きるために、その道具としてブログにもう一度光を当てるために、自分の余命は残りわずかだと意識して、これからの10年を生きること。自分の大切なものと向き合っていく10年間にすること。それを目指して、今ここからが、新たな自分のリスタートだ。

 

(70分)