カンチブレーキ

先週末に家にこもりがちだったことから、「次の週末こそは自転車で遠くへ!」と強く思っていた。しかし、運の悪いタイミングで接近して来た台風11号の影響で、今日は一日雨が降ったり止んだりの空模様。とても自転車で出かけるような天気ではなかった。残念至極で、気分が落ち込んだ。平日は朝早くて夜遅く、録りためたテレビ番組を視聴するくらいしか楽しみがないので、週末のストレス発散が週明けの仕事のパフォーマンスに、はっきりと影響するのだ。仕方ないので、古い自転車雑誌(サイクルスポーツ)を読み直し、自転車のことを考えることで、少しではあるが気を紛らわすことにしたのだった。


そういえば、先日の乗鞍岳ヒルクライムの際に、ロードバイクの前輪の着脱でかなり手を煩わされたことがあった。S君の車にロードを積み込むために、初めて前輪を外したのだが、そのときに困ったのが「カンチブレーキの解放方法」だった。ここで言う解放というのは、車輪の着脱時に、タイヤがブレーキパッドに引っかからないように、キャリパーを外側に開いて、リムとブレーキパッドの間隔を広げることを指す。一般的に使用されているVブレーキであれば、自分も解放のやり方は知っているし、先月長岡まで輪行した時に実践していた。しかし、自分のロードに取り付けられたカンチブレーキは、昔ながらのブレーキで、現在ではシクロクロスサイクル以外ではほとんど使われていないため、自分には解放方法についての知識がなかった。自分のロードになぜカンチが付いているかと言えば、シクロクロス用のフレームが使われているからなのだが、これまでブレーキを解放する事態を考えたことがなかったので、情報収集を怠ってしまっていた。そのため、乗鞍では前輪の着脱に難儀し、再装着時にブレーキが片効きになって調整に時間がかかってしまうという困難に見舞われたのだった。車輪の着脱は、車載時のみならず、パンク修理時にも行なわなければならないので、ブレーキの解放方法は必須知識である。これではマズいと思い、ヒルクライムの翌日、松本から家に帰る前に、ロードを車に積んだままロードを買った自転車ショップに立ち寄った。ここで、自分が自己流で片効きを直したブレーキをきちんと再調整してもらうとともに、カンチブレーキの正しい解放方法についても教わることにした。その方法は、あまりにも簡単で、拍子抜けしてしまうほどだった。以下に、その方法を記しておくとする。




解放時には、正面から見て左側のブレーキのキャリパー(ブレーキパッドが取りつけられているアーム部分)をいじることになる。



裏側から見ると、太鼓状のワイヤの先端部分が、キャリパーに引っかかっているだけの構造であることが分かる。



左右のキャリパーをこのように手で締めつけてワイヤを緩め、太鼓をちょっと下に引っ張りながら外側にずらす。



すると、太鼓がキャリパーから外れ、キャリパーが外側に展開してブレーキが解放された状態になる。



リムとブレーキパッドの間隔がこれだけ広くなるので、タイヤはするりと外すことが出来る。


ということで、一瞬にしてブレーキが解放できたのだった。あまりにもあっけなく簡単すぎるためか、逆にネット上でも詳しい説明があまり載っていないようだったので、今回写真付きの記事を掲載することにした次第である。カンチを装着したロードバイクがオンロードを走っている姿なんてほとんど見かけないし、ごく普通のローディはたぶん実物のカンチを見たことすらあまりないだろうと思う。実際、S君も解放方法を知らなかった。だが、Vブレーキにほとんど取って替わられたとはいえ、現在も現役で使われている技術なので、自分でカンチを使っていない人にとっても、知っていて損はない知識ではあるはずだ。豆知識として知っていると、カンチのことで困っている人に遭遇した時に、ちょっと自慢できる・・・かもしれない。

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