ランドネ:2012/10/20

先週の土曜日は、秋らしい気持ちのいい晴天に恵まれた。それを目にした自分は、泊りがけの飲み会からの朝帰りの途中で、「これは少し遠くへ自転車で行くチャンスだ!行くしかない!」と決意。昼食後の13時に整備も十分にしないまま愛車にまたがり、リュック一つを背負って家を出た。服装は半そでシャツに普通のハーフパンツ、頭はヘルメットと透明のアイウェア、手にはグローブという出で立ちだった。


今回の目的地、それは長野県の野尻湖だった。家から何kmあるのか分からないし、県境まで国道をひたすらに上り続けるので、辛い道のりだろうことは明白だったが、以前から一度挑戦してみたいと思っていた。というのも、趣味で自転車をやっていることを人に伝えるのに、困難な目標の達成を語るのは、一番効果的で分かりやすいからである。それだけ熱心なのだということを相手に理解してもらうために使える。特に、地元の人にとっては、自分がかつて弥彦山を上った経験を語るより、「野尻湖まで行く」ということのほうが遥かにイメージしやすいはずだ。それに自分自身の体力と根性を試したいという思いもあった。遠すぎず、高すぎない目標として、野尻湖というのは最も適していたのである。


家を出て数km走ると、早速上り坂が始まった。走ったのは主に、国道18号線。日差しはさほど強くなく、温度も高くはなかったが、自分の体重と車体を前進させるために踏むペダルの重さが増すにつれ、どんどん汗が噴き出してきた。その辛さについ、立ち止まってタオルで汗をぬぐい、水分補給をしたくなったが、日没前の17時までに帰宅するという条件があったため、休憩は10kmに1回と決め、汗も手でぬぐって我慢した。そんな具合なので、時折汗が目にまで流れ込んできた(コンタクトレンズをつけた目には有害かつ苦痛だ)し、日焼け止めもすぐに流されてしまった(運動前に塗るのは無意味だと思い知った)が、自分の脇を次々と走り抜けていく自動車に対して「どうだ、自分のエネルギーだけで走ってるんだぜ、すごいだろ」と優越感を持つことで自分を励まし前に進む原動力に変えたのだった。




↑先月DEPOで一目ぼれして購入し、今回初使用した自転車用リュック。背面が背中に密着しつつも、背骨の部分に適度な隙間があり通気性が確保るようになっており、背負っていてとても楽だった。


10km地点の自販機では5分の小休憩を、20km地点の野菜直売所では本格的な休憩をとった。ここでは、抹茶のソフトクリームを食べた。喉が渇いていたこともあり非常においしく感じた。こういう「栄養補給」が自転車で出かけることの楽しみであり、前からやりたいと思っていた。半そでハーフパンツ姿は、周りのお客さんとは一線を画していたが、頭を乾かすためにもヘルメットは外したし、レーパン姿ほどの違和感はなかったろう。



↑抹茶ソフト、280円。


20分ほど休憩してから走行を再開。元からずっと上りだった上に、20km地点以降は勾配が更に急になり、体力的に極めて厳しかった。もうやめようかとも思ったが、ここまで来たら最後まで行こうという思いに後押しされ、何とか頑張った。スキーに行くのに毎年何度も通っている道なので、残りの距離がそう長くないことは体感的に分かっていた。



↑基本的に車道の路側帯の白線寄りを走ったが、トンネルでは歩道を通った。ただし狭い上、ガラスや金属片が見えにくく踏みぬいてパンクするリスクが高いため、自転車を押して歩いた。



↑県境の長い橋。標高612m地点。



↑橋の上からは思わず目を奪われる素晴らしい眺めが拡がっていた。



↑とうとう長野県に突入。自転車で県外まで飛び出したのは初めてのこと。自分にとっては大きな一歩だった。


自転車は、走った。やがて県境の橋を超え、最後のトンネルを抜け、そして15時10分、とうとう目的地の野尻湖に到着した。家を出てから2時間、実走行時間は約1時間半。距離は約30kmで、思いのほか近かった。広い湖の美しい景色を前にして、何ともいいがたい充実感と達成感がこみ上げてきた。大した距離ではないのだが、県境をまたいだことが手伝って、よくぞここまで来たなぁ、自分もなかなかやるじゃないかという自己肯定感すら覚えたのだった。湖のパノラマは、自分にとって素晴らしいご褒美だった。本当はここでしばらくゆっくりしたかったが、そろそろ日も傾き始め、日没が近付きつつあった。また、標高の上昇に伴い気温が急激に低下してもいた。汗が乾くのを待って長袖を重ね着すると、名残惜しさを感じつつも湖畔を出発し、来た道を引き返した。その際、当初目的の一つにしていた長野のお土産を買うことは失念したのだが、長野名物のおやきを食べていくことだけは忘れなかった。






野沢菜のおやき、200円。


帰りは上りの反対にひたすら下りだったので、新潟県に戻ってから平地に出るまで、20km以上ほとんどペダルをこがずに進むことが出来た。それが楽かというと意外とそうでもなく、安全のために小まめにブレーキをかける必要があったし、スピードが出ることによって細かい振動が体に伝わってくることや、アイウェアの中に吹き込む風で目が乾くことの身体的負荷もあったし、パンクを恐れてついつい下ばかり見てしまったので、景色を楽しむことは叶わなかった。一番きつかったのは、時間の都合で家まで休憩なしのノンストップにならざるをえなかったことだ。そんなこんなで、16時40分に家にまで無事辿り着いた。野尻湖を出てからちょうど1時間ほど。当然ながら行きよりも遥かに早かった。4時間未満で60kmを走る、なかなかに強行軍なサイクリングだった。


今回の自転車でのショートトリップ(ランドネ)がとても楽しかったので、雪の降る前にもう2回くらいは、同じような距離のところに行ってきたいと思う。職場の若手を誘って一緒に行くのもいいだろう。今度相談してみたい。

(80分)