流行性感冒 その2

残念なことに、結果はクロだった。自分はインフルエンザA型に感染していたのである。


19日は朝から体調が悪かった。「こりゃちょっと夕方までは体が持たないな」と思って、夜に予定されていた職員ボウリング大会と懇親会への参加見合わせを自分の中で決定していたし、重要な仕事が終わり次第早退しようと勝手に考えていた。重要な仕事というのは、それぞれ異なる内容の添付ファイルがついたメールを100通ほど送るというもので、昨日は添付するファイルを作るところから取りかからねばならなかった。しかしこれがとてつもなく根気のいる作業で、テキストの打ちこみと確認という同じ作業の繰り返しは非常にストレスフルだった。そんな中で次第に体調は悪化し、熱、寒気、咳といった症状が自分の体をいたぶった。早く終わらせて帰ろうと思って昼食を摂らずに昼休みも仕事を続けたものの、集中力の低下と体調の悪化で作業能率はだんだんと低下し、作業も終わりが見えてきたところで体力的にいよいよ耐えがたくなっていた。そんな状態で15時過ぎに室長にボウリング大会を欠席する旨を伝えたら、案の定体調を疑われて、学内の保健センターで体温を測ってこいと言われてしまった。それでやむなく体温を測ったら、37.5度と微妙に熱があった。インフルエンザの疑いありということで、すぐさま退勤して内科を受診するよう指示された。休みの手続き等は後で取れとのことだった。あと1時間くらいで終わるから、もう少しやりたいんだがなぁ、インフルだとしたら大迷惑だなぁなどと思いつつ、急いで机を片づけ、やりかけの仕事を上司に引き継いで16時前に職場を後にした。


一旦帰宅した後、自宅近くの診療所を受診した。行くとまず体温を測らされた。37.8度でさっきより更に上がっていた。血圧を測ると最高90、最低67とかなり低かった。不安が高まる中、鼻の奥を麺棒でつつかれ、採取した鼻水からインフルの検査を受けた。そして、インフルに感染していることが判明したのだった。それを伝えられた時は、脱力感に襲われたのを覚えている。インフルであるということは、一週間の出勤停止となるということだ。その間は上司が自分の仕事を代行しなければならず負担をかけることになるし、自分が体をだましだまし夕方まで職場にとどまっていたことで、ウイルスが他の人にうつってしまった可能性もある。二重の意味で大迷惑だと反省し、落ち込んだ。一週間休みというのは、途方もなく長い期間であるように感じられた。来週職場に復帰するとして、そのときどんな面を引っ提げて行けばいいのか、どうお詫びしたらいいのか、そんな不安が真っ先に頭をよぎった。


その後は色々と面倒くさかった。薬局で処方箋をもらって、帰宅後に「イナビル」という薬を吸入した。目薬のような容器の中に入った粉末状の薬を口から吸い込んで使うもので、のどと気管支のウイルスの増加を抑えるのだという。粉末を肺に吸い込むなんて大丈夫なのか?と思ったが、これは一回だけすればよいというので、仕方なく吸い込んだ。ただきちんと吸いこめたかどうか、いまいち実感がなかった。それから、室長に電話してインフルに感染していたことを報告したり、21日から泊まるはずだった宿に電話して宿泊をキャンセルしたりした。キャンセル料を請求されなかったのはラッキーだったが、せっかくの予定がパーになってしまったのは残念だった。その夜は、この後はどうなっちゃうんだろうなという心配をかかえたまま眠りについた。


そして一晩明けた今日。気持ちは割と前向きになっていた。もうこうなってしまったものは仕方ない、本でも読んで有意義に過ごそうと思うようになり、ベッドに山積みの本を用意した。ただ、実際には、昨日に比べ症状が軽くなり、ベッドの外で過ごすことのほうが長かったことから、あまり本は読めなかった。祖父母がいるため、日中も食事の心配などをしなくて済んだのは本当によかった。こういうとき、実家暮らしだと本当に助かる。一人暮らしだったら食事もままならず、治るものも治らないような状態だっただろう。毎朝病状を上司に報告する以外は特に職場からは要求されていないので、この一週間は仕事のことも一旦忘れて、体と同時に心と頭もリフレッシュする機会とできればいいと思っている。外出はせず、安静にして、インフルにかかる前より元気になって職場復帰できるようしっかり治したいものである。

(75分)