在宅勤務について考える

(※本記事は2020/4/25時点で作成したものです。)

勤務時間として正式に認められた在宅勤務としては、私自身はまだ実施していません。ただ、これまで自主的な休日出勤や、非公式な持ち帰り残業を長年に渡り重ねてきた経験を基に、在宅勤務に対する考え方や、在宅で能率を高めるための工夫、そして今後個人に突きつけられることになるであろう課題について、思うことをまとめてみたいと思います。

 

<在宅勤務に対する考え方>
1)「接触8割減」で学生、教職員、家族等の命を守るという目的が最優先
何より大事な命を守るために、在宅勤務で接触を減らすことは必須の行動。どうにかして出来るだけ出勤できるようにしようとか、人員減は5割で十分とかいった考えはこの至上命令を履き違えている。「接触8割減」という大前提を徹底し、実現できるようにした上で、では現実としてどうやって仕事をするかということを次に考えるべき。

2)「在宅では無理」と思考停止せず、「どうやったらできるか」を考える
家で仕事をするのは無理、家にいる時間は休みと同じようなもの、と語る人が多いが、それは思考停止であり、ある意味職務放棄ではないか。在宅勤務を命じられた以上は、何とかして家で仕事をするための方法や工夫を全力で考えるのが職業人としての務めであろう。

3)コロナ禍の収束後も見据えて、「働き方改革」を進める好機にする
仕事のやり方を根本的に見直し、生産性を高めるための工夫・改善を進めるチャンスと捉えて、この逆境に前向きに立ち向かうことが大切。また、改善した働き方を、新型コロナ対応としての緊急的・一時的な措置として終わらせることなく、その後も継続・発展させていくことで、残業ありきの硬直化した組織風土に風穴を開けることが必要。

 

<在宅勤務のための工夫>
1)「在宅で可能」なことと「出勤でしかできない」ことの区別を明確にする
在宅で仕事をする際の最大の障害は、作業途中で「出勤しないとできない」工程にぶち当たったときに、そこで仕事が中断してしまうこと。これに伴う時間的ロスや能率ダウンを回避することが不可欠。そのためには、PCを持ち帰れば在宅で可能な作業と、紙資料の参照や業務システムの使用、対面等を伴う職場でしかできない作業を明確に区別し、後者の工程を予め切り離しておくことが必要。自宅でできない作業はスキップし、出勤時にまとめてやれば時間のロスも防げる。また、紙資料も普段からこまめにPDF化し業務フォルダに保存しておけば、いざというときに持ち帰りが容易になる。

2)その日に取り組む業務のゴールを決め、目標時間を定めてから仕事に着手する
職場に来てから、さて今日は何をやるかと考えるスタイルだと、できること、使えるものに種々の制約がある在宅での仕事は捗らない。制約の中で仕事を進めるには、前日までにその日の「業務リスト」を作って、在宅でできる作業だけを家に持ち帰ることが必要になる。また、周囲の目がない環境での仕事は集中力が散漫になりがちなので、どこまでやるかというゴールを決め、さらに目標時間を設定することで、時間を意識し集中するように自分を追い込む仕掛け作りも必要となる。

3)上司との間やチーム内での情報共有、報連相をこまめに、積極的に行う
同僚の顔が見えない状況で仕事をすると、普段なら周りからの質問や指摘で気づく問題等が発見されないまま先に進んでしまったり、上司の考えと違うやり方で先まで進めてしまい、完成寸前まで行ってしまった後で修正を求められる「手戻り」が生じたりするリスクが高まる。そのため、メールやチャットツールを使う等して、普段以上にこまめに、そして自分から積極的に上司や同僚とコミュニケーションを取っていくことが欠かせない。特に「たぶん大丈夫だろう」といった思い込みは徹底的に排除し、マニュアルを参照したり、すぐに他の人に確認をしたりすることが、お互いの顔が見えない中でミスを防ぐために最も重要。その日の業務内容と成果をまとめた日誌を書いて上司に報告することも、「在宅で仕事はできない」と考えている上司世代の意識を変えていく上で有効な一手となりうる。

 

<在宅でできる仕事> 
個人的な見解として、事務職員のすべての仕事は以下の4つに大別できると考えている。
①情報の収集・交換・発信・・・打合せ、出張、メール、電話、文書発出、窓口対応等
②情報の作成・加工・保存・・・文書・資料の作成、業務システムへの入出力、印刷等
③情報の確認・・・書類のチェック、納品物品の検収(現物確認)等
④意思決定・・・会議の開催、起案文書の決裁等
※係長以上の役職の場合は、「部下の教育」も追加となる。
※まれに清掃作業や公用車の運転・送迎等の仕事も生じるが、あくまで例外的なケース。
自分の担当業務において行っている作業内容を一度書き出してみた上で、上記の区分に当てはめて分類し、さらに業務遂行上で必要な手段・ツールを選択していくと、ほとんどの作業は何らかの方法で在宅でも可能であることに気づくと思う。(下表参照)

【契約担当の業務仕分けの例(一部のみ)】

業務内容

業務区分

必要な手段・ツール

在宅での可否

在宅で利用可能

在宅利用不可

PC

メール

Zoom

業務システム

仕様書作成

 

 

 

 

発注

 

 

 

○(入出力)

官公需実績報告

 

 

 

○(出力のみ)

したがって、「在宅では仕事はできない」というのは、大半の場合、思い込みに過ぎない。


<在宅ワーカーに問われるもの>
最後に、在宅という働き方を選択した人に突き付けられることになる課題について触れておきたい。在宅は決して仕事を楽にするものではなく、むしろハードルは上がる。そのハードルを越える力を身につけられないと、将来に渡って働き続けることは困難だろう。

1)自分がどれだけ担当業務の「プロフェッショナル」として「自立」しているか
知識が自分の中に蓄積されておらず、仕事の流れや仕組みを正しく、十分に知解できていない状態で在宅勤務をすると、自分自身で判断できないことにぶち当たって仕事の効率が落ち、ひいてはミスにもつながる。担当業務に熟達し、かつ個人の裁量で一定程度仕事を回せる域まで自立していないと、在宅で円滑に仕事を進めることは難しい。

2)業務の目的に対して、自分の仕事がどれだけの付加価値を生み出しているか
自分の仕事のミッションは何か、そのために成し遂げるべき目標は何かを突き詰め、周りと議論してコンセンサスを得て、それに対する正しい成果として示せる付加価値を自ら生み出す能力があるかどうかが、在宅で仕事ができる人とできない人との差という形で、白日の下にさらされる。労働時間の長さや、職場にいること自体が仕事なのだと勘違いしている人は、在宅で職場という時間・空間から切り離された「成果」を問われるようになると窮地に立たされることになるだろう。

 

(2020/4/25朝活「在宅勤務について考える」作成資料より転載)