抜歯 その4〜難儀〜

もう一昨日のことになるが、いつもの歯医者に行き、治療を受けてきた。今回は、いよいよ下の親知らずを抜くことになっていた。下は生え方が悪く、抜歯も難航が予想されていたが、すでに2回抜歯を経験し、痛みがないことは分かっていたので、手術の難易度が高まったのとは反対に、これまでよりも落ち着いた気持ちで手術に臨んだのだった。


今回は、医者の判断で左の親知らずを抜くことになった。横倒しになって生えており(「水平埋伏智歯」というらしい。Wikipedia自分のとほぼ同じ状態の写真が掲載されている)、これまでのように単純には抜けないと言われていたので、手術が長引いてもいいよう、午前中の一番最後の時間に予約を取っていた。麻酔を打ってから薬を3種類飲むなど、一連の大まかな部分は今までの手術と同様だったので省略する。違ったのは、横倒しになった歯を抜くために歯肉を切開したこと、歯を抜くのに時間がかかったこと、抜歯後5針ほども縫ったことだった。今回の歯は相当手ごわかったらしく、医者も「なかなか動かないな」とぼやきながら、次々に色んな道具を持ってくるよう指示を出していた。以前は上半分だけ輪切りにして取り除き、それから下半分を引っこ抜くと聞かされていたのだが、何らかの事情で作戦が変更されたらしい。ようやくにして音もなく抜けた歯を見たときには、2分割はされていなかった。おそらく、横倒しの歯をテコのように起こして引っこ抜いたのだろう。歯は足がピタッとくっついた形をしていて、狭い場所に無理やり生えてきたからこんなんになったのかなと想像された。抜いた歯の根元に骨が付いていると医者が説明したので、「え、じゃあ顎骨削れちゃったのか?」と少し不安になったが、別に大したことはないし、そのうち骨が再生すると聞かされたので、すぐに気を持ち直して安心した。ガーゼを噛んで満足に動かせない口から何とか言葉を発して次回の予約を取ると、家族の迎えを呼んで家に帰った。しめて40分くらいかかったので、いつもよりは長かったといえる。


大きな出血は割とすぐ収まった。その日は一日出血が続いたが、唾液の分泌で血が薄められたのであんまり血の味は感じなかった。唇のしびれが起きたものの、それも夜までには完全に治った。だが、顎の動かしずらさ、腫れぼったい感じは、なかなか引かなかった。頭蓋骨にがっちり固定されている上あごと違い、下あごは可動部である。その下あごの付け根近いところにある歯を抜いたのだから、そこが少しでも腫れれば、顎の動きに影響を与えることは避けられない。特に最初は顎を十分に開くことがままならなかったので、土曜の夜はおじや(雑炊)を食べて顎への負担を減らすよう配慮した。精神的な影響も含めて、やっと普通に食べられるようになったのは、日曜の夕食からだった。丸2日経った今でも、腫れは若干残っていて歯磨きは少しやりづらい。だが、口は普通に開けるようになったし、痛みや出血はなく、ほぼ元の状態を取り戻しつつある。喉元過ぎればなんとやらというか、案ずるより産むが易しというか、案外順調に快復したので、ほっとしている。残る親知らずはあと1本。ラスボスとのバトルの日は近い。

(45分)