残存

今日の仕事中、ふと何気なくあごの下をさすったら、「あっ」と思って急に気持ちに波が立った。その部分にひげの剃り残しがあったからである。自分は休日を除き、毎朝10分ほどかけて電気シェーバーでひげを剃っている。剃り残しのないよう、ひげが目立たなくなるよう、時間をかけ念入りに剃っているのである。自分は営業職とかではないし、普通は職場で顔をじろじろ見られることもないし、男女比的には男性が多いから、正直言ってそこまで時間と労力をかけずちゃちゃっと済ませても、他の人は特に気づかないだろう。最低限遠目に青く見えない程度に剃っていれば、不潔と思われることもないはずだ。しかし自分はひげを念入りに剃らないと気が済まない。あご下のような、正面を向いていれば人の目には付かないような場所であっても、残っていては気に障る。人に見られてどう思われるかということよりも、ひげが残っているという事実が我慢ならないのである。顔の肌をさすって、ジョリジョリと引っかかる部分が存在することが気持ち悪くて仕方ないのである。だから、剃るからには徹底的に剃る、家から出ないなら剃らない。ことひげに関しては、自分はそうした完璧主義的な思考が強いのである。そのため、ひげのそり残しに気づいてからしばらくは、その部分が気になってしばらく落ち着かなかった。


カミソリメーカーのシックのHPに、ひげに関して興味深い記述があるので、以下に引用する。


人間の顔には、銅線に匹敵するほどの堅さと粘り強さを持った約25,000本の毛が生えており、それらは、一年間に125〜150mmという速さで伸びています。何千年もの間男性は、その頑固なヒゲと終わりなき戦いを続け、そして今でも男性は一生のうちの1,650時間以上をも、ヒゲ剃りに費やしているのです。
(引用元:シック「シェービングの科学と技術 1章歴史 2.人類と髭」)


上の文章において、自分は「1,650時間」という時間の部分が気になった。この数字をどういう条件で算出したのかは分からない。だが、自分が22歳から72歳までの50年間に週に約6回、毎回10分かけてひげを剃り続けたとすると、その所要時間の総計は以下のようになる。
 10(分)×300(日)×50(年)÷60=2,500(時間)
うーん、やっぱり結構かかるようだ。シェーバーでこれだから、顔を蒸しタオルで温めてムースをつけてカミソリで剃ったりすれば、もっと時間がかかるだろう。学生時代は、ひげを剃る頻度が今より少なかった代わり(何日に1回だったかとか、具体的なことはもう忘れてしまったが毎日ではなかったことは確か)に、カミソリを使うことが多かったため、1回当たり20分くらいはかけていた。神経質なまでに深剃りにこだわっていたので、流血の惨事も日常茶飯事だった。18歳の時から起算するとすれば、この時間が結構上積みされるだろうことは間違いない。邪魔なものを片づけるだけの、いわば草むしりともいうべきごとき作業のためにこれほど膨大な時間と労力を要求されるとは、なんとも不毛なものだ。ああ哀しき男の性よ・・・。

(55分)