読書:旅行者の朝食


著者:米原万里
出版社: 文藝春秋
発売日:2004/10
購入日:2007/10/5
読了日:2009/12/31



2年前に、「経済学史Ⅰ」という講義で紹介されて興味を持ったことから購入した本。今年最後に読んだ本となったが、最後を飾るにふさわしい傑作だった。


内容は、主に著者が海外や国内で見聞きし、体験した食べ物にまつわる事象について、紹介し考察するといったもの。著者はロシア語の同時通訳者で、年少時代に5年間も社会主義時代のチェコで暮らしたということもあり、体験談も普通に日本で暮らしていてはありえないこと、外国との文化の違いを浮き彫りにするものに富んでいて面白く、一つ一つの話に興味津々でページをめくる手が止まらなかった。特に著者の通訳としての仕事に深く関わるロシア(または旧ソ連圏)に関する話題は豊富で、ロシア人の素顔を少しだけ知ることが出来たような気がした。


この本の魅力的なところというのは、以下の3点にまとめられる。
①資料に裏づけされた歴史や文化、食、文学等に関する幅広いうんちくが豊富にちりばめられている点(というか本書はうんちくの塊である)
②文章が軽妙で、著者の行動力と観察眼、洞察力の深さ、ユーモアさによって抱腹必至の絶妙の面白さを獲得している点
③ユーモラスで食いしん坊な著者の人柄が行間からありありと見えてくる
これこそ、自分の理想とする文章だ!と読みながら感動してしまった。浦沢直樹のコミック「マスターキートン」(の主人公「平賀=キートン・太一」)もこうした要素を満たしていて、フィクションのキャラクターではあるがキートン先生は自分にとっての理想の人物である。今回この本を読んで米原さんには、強く興味を惹かれた。他の本も読んでみたくなった。読む前から知っていたのだが、残念なことに、米原さんは2006年に癌で亡くなっている。56歳だった。ただ、著作は共著なども含めると20冊以上あるようだ。それらを読むことで彼女の足跡をたどり、人間像に迫ってみたい、もっと知りたいと思っている。


こういううんちくにあふれる本を読んで自分の無知を思い知らされると、もっともっと本を読みたいという気持ちが強く沸いてくる。文章をうまくなりたいという気持ちもだ。来年は、本を新たに72冊は読みきりたいと思っている。この目標は今、決めた。月6冊×12ヶ月で72冊である。50冊では少ないし、100冊では多くて無理なような気がするので、この辺が妥当で現実的な域だと考えている。自分の経験が薄っぺらくて面白い話が出来ないのなら、雑学の多さで勝負してやる、という戦法である。


いろんな本を読んで多くのことに興味を向ける中で、「これは一生かけて追求したい」という分野を見つけられることが一つの大きな目標でもある。ライフワークと言えるようなものに出会える日を願って、これから読書と勉強の日々を送っていきたい。

(45分)