高額de驚愕

Sから、彼が使っていた公務員試験の問題集と参考書の売却を頼まれたのは今週の火曜のこと。スー過去や畑中本など計35冊を渡されたので、自分の不要な本2冊も合わせてセットにし、即日ヤフオクに出品した。定価にして59745円分のセットである。ヤフオクにしたのは、まとめて売るなら、一番手軽で、いい金額になるだろうと判断したからだ。ブックオフでは一冊10円で買い叩かれるのが目に見えているが、マージンをほとんど取られないヤフオクなら、正当な対価を受け取ることが出来、合理的なのだ。


自分はヤフオクを利用し始めてからもう7年目になる。大学受験時など、一時利用を停止していた期間もあるが、基本的に月2、3回のペースで出品と落札の両方を手がけてきた。今までに取引した回数は180回以上。ベテランとまでは行かないが、ここでのノウハウやルールには結構精通しているほうだと思う。


売り上げは折半すると聞かされたので、なるべく高い値段で売れるといいなとは思ったものの、中古品だし1万円行けばいいほうか、と甘く見て正直それほど工夫もせずに出品した。そのため「もうちょっと写真をきれいに撮ったほうがよかったかも」とか、「トラブルを避けるためとはいえ、商品の状態を悪く評価しすぎてるかな」とかあとで反省したのだった。ちなみに工夫した点というのは、送料の落札者負担を無料にすることと、注目のオークションに載せること、出品終了日を週末に設定することの3点だった。


これらの3点はノウハウでもなんでもなく、ヤフオクの基本的なテクニックに過ぎない。ヤフオクには被落札価格を高く、落札価格を低くするための常識的手法みたいなものがたくさんあるし、円滑に取引を進めるための不文律のようなものも色々とある。取引相手は何歳なのかもわからないし、モノとお金をやりとりする「取引」であるため、対応は常に誠実丁寧であらねばならず、敬語の使用や迅速な連絡など、基本的なビジネスマナーも必要とされる。そういう意味では、高校時代からヤフオクに馴染んでいたことで、色々と勉強になった部分というのは多かったのだろうと思う。少なくとも郵便のサービスには結構詳しくなった。安いからといって要不要を考えずに無駄遣いしてしまったことも多かったが、それも一種の授業料だったともいえる。今のところ、取引相手から損害を負わされたことはないし、最終的に悪い評価をつけられるようなトラブルに発展したケースもない。そういう制度はないけれど、自分は優良なユーザーの部類に判定されてしかるべきだと思っていたりもする。


話はそれたが、今日が上記の出品の終了日だった。最終的についた落札価格はというと…なんと、驚くなかれ、約35000円だったのである。Sからメールをもらって確認してみて、びっくりしてしまった。自分の出品での落札価格としては当然過去最高額。送料を引いたとしても、折半したら16000円にはなるだろうか。でも申し訳ないから、そんなにもらうのは遠慮するとしよう。旧版のスー過去が主体だったというのに、ここまで価格が高騰したのには、現在の公務員人気の高まりが一役買ったのだろう。何はともあれ、思いがけない幸運だった。


しかしこれからがある意味で勝負の本番でもある。相手から代金がしっかり振り込まれ、商品が取引相手のところまできちんと届き、実物の商品を手にした取引相手がそれに満足してくれ「非常によい」という評価を与えてくれるという一連の手続きを完了するまでは、今回の取引が成功したことにはならない。額が額だけに、普段以上の慎重さと迅速さが求められることは間違いない。ヤフオクは社会の一端であり、学生だからといって間違いが許されることのない「大人の世界」なのだ。ハラハラドキドキするが、しかしこれもまたヤフオクというリアルな世界の楽しさの一つなのである。
(55分)