夜間走行

今日は、家族に乞われて、特に用もないが帰省した。いや全く用がなかったわけではなく、正直液晶TVを購入したことで今月の生活費がすでに尽きかけていたので、出来れば来月の生活費を前借したいと思っていた。生活費は毎月実家で手渡しで受け取っている。父に頼んだら幸いにも了承されたので、貯金を無闇に切り崩さずに済みそうな見通しだ。月曜にはまた大学に戻るが、それまでにバーチャルコンソールの聖剣2でもクリアしようかと思っている。


夜、知人と飲み会に行っていた母から、車で迎えに来て欲しいという連絡を受けた。軽トラなら別にいいと思っていたら、母の普通車で来て欲しいとのこと。どうやら母のほかに同乗者がいるらしい。これは参ったな、と思った。車の図体がでかいしこの車の運転経験はほとんどないので、運転できるか不安だった。というか、MT車だったのが一番問題だった。軽トラは車体が軽いから、2速発進も可能だし、半クラは簡単でまずエンストはしない。でも普通車となるとそうも行かないよなぁと懸念した。自分は教習中に毎回必ず1度はエンストを起こしていた情けない野郎だったのである。しかも、家の車を夜間に運転した経験はない。しかしそんなこと関係なく、とにかく行かねばならない。一人では不安なので、弟を助手席に乗せて駅前まで向かった。


行きはずっと慣れた道を走ったが、終始緊張感に支配されていた。帰りは同乗者の人を送るために普段通らない道を走行したので、更に運転に集中した。話しかけられてもうまく愛想を添えることが出来なかったので、駅前で車から降りて挨拶したときとは別人に見えたかもしれない。免許取り立てでもあるまいし、この前はAT車とはいえ一人で一日かけて360kmも走ったんだから、何をそんなに怖がるのか、という見方もあると思う。でも事故を起こしたら大変だし、運転に慣れきってしまうほど怖いことはないという思いが根底にあった。何より昼間と夜間とでは、視界が全然違うから、感覚としては全く別物に感じられたのである。家の前まで帰ってきて、自分の集中力はやっと切ることが出来たのだった。


車はいつどんなときであれ、走っているときは常に凶器であり、運転者であれば自分がいつ殺人者になるとも限らない。走ることで環境破壊につながることはいわずもがな。便利さと引き換えに抱えているリスクはあまりにも多い。車のそうした面に盲目になることなく、緊張感と、ある意味での冷めた目とを持って、今後も近づきすぎない程度の付き合いを続けて行きたいと思っている。

(30分)