撮影用照明ボックス

自分が自宅で小物の写真を撮る際に常々不満に感じていたこととして、「照明環境が悪い」という問題があった。写真を撮る際に最も重要な要素は、光である。なぜなら、写真というのは光を記録する技術だからだ。十分な光なくして、ノイズが少なく明るいきれいな写真を撮ることは困難である。しかし、買ってきたものなどの写真を撮るというのは、たいていの場合は夜なので自然光が利用できず、天井からの照明では十分な光が得られない。かといって、フラッシュを使うと反射で被写体が白くつぶれてしまうほか、被写体の立体感が失われるといった問題もあり、いい写真は撮れない(写真をきれいに撮るなら、基本的に内蔵フラッシュは使うべきではない)。単なる記録用として撮るならノイズの乗った写真でもいいが、ブログ掲載用として撮る場合にはやはり、人さまに見てもらうのだからなるべくきれいな写真を撮りたいと思うのが人情というものだ。そのため、これまでは次善の策として、蛍光灯のスタンドライトを照明手段として使ってきたが、上からの一方的な光だけでは被写体を十分に照らすことが出来ず、また写真の背景に自分の部屋の景色が映ってしまうのが難点でもあった。背景の問題は、十分な自然光が得られる昼間にも問題になることだった。そこで今回、写真をよりきれいに撮るための小道具、「撮影用照明ボックス」を自作することにした。


撮影用照明ボックス(以下ボックス)というのは、簡単に言えば、照明を効果的に利用するために内側を白く(ないし一種類の薄い色に)した箱のことである。白は光をもっともよく反射するし、被写体の輪郭をくっきりと浮かび上がらせ見栄えをよくするので、この箱の中に被写体を置いて撮影すると、被写体が全体的に明るく映るのである。また箱が背景を兼ねることになるので、余計なものが映り込む心配もなくなる。ブログ用の写真のほか、ヤフオクに物を出品する時の写真撮影にも便利だろうと考えた。このボックスを、自宅にある段ボール箱と、100円ショップで買ってきた模造紙を使って、自作してみた。作り方等は特に調べず、ネットでほかの人が自作したものの写真を頭に思い描きながら、設計図等はなしに見よう見まねで作ってみた。




↑材料はAmazonの箱と模造紙と両面テープ、ガムテープのみ。かかった費用は210円。青い模造紙は今回は使っていないが、オプションで背景色を変更するために使用可能となっている。


製作する上でのポイントはたった2つ。1つは、内側を白の模造紙で覆うこと。そしてもう1つは、背景部分は背面から底面に、折り目を付けず曲面を描くように、だらんと1枚の紙を垂らすことである。そうすると、写真を撮った時に底面と背景の「継ぎ目」が映らず、きれいに写すことが可能になるのである。荷重がかかるような道具ではないので、底面以外は補強はしなかった。そうして、1時間ほどでボックスが出来あがった。



極めてシンプルな作りだったが、紙の大きさを箱に合わせて切るのに少し時間がかかった。完成後は早速、スタンドライトをセットして、初音ミクねんどろいどを使って撮影テストをしてみた。



↑サイズはおよそ横400mm×奥行き300mm。小物の撮影には十分なサイズで、さながらスタジオのようだ。



↑ISO100、F5、1/100秒、35mm換算焦点距離:36mm(望遠なし)


まずは、デジカメ任せでオート撮影してみた。背景の明るさに露出を合わせてしまったため、うまく撮ることが出来なかった。箱の効果きちんとが現れていない。そのため今度は自分で露出を決めて、マニュアル撮影してみた。



↑ISO100、F3.2、1/40秒、35mm換算焦点距離:70mm(少し望遠)


すると今度は見違えるほどきれいな写真が撮れた。「これこそ自分が理想としていたものだ!」と、しばしの間、感動に浸ったのだった。ただ、よく見てみると顔の部分に影が出来ていて、ミクの表情が少し曇って見えてしまう。これではまだ、「見せる写真」としては十分でも「魅せる写真」としては不十分である。そこで、照明を少しいじってみた。



蛍光灯が上から直接降り注ぎ、明るすぎるのがいけないと思ったので、照明の下に薄い紙を一枚当ててみた。これにより、上からの直接光の効果を和らげると同時に、左右から反射させた間接光の効果を相対的に高め、被写体を全体的に照らすことを狙った。この工夫を講じた上で改めて撮影テストをしてみた。



↑ISO100、F2.8、1/30秒、35mm換算焦点距離:36mm(望遠なし)


今度は顔の影もなくなり、ほぼ思い通りの写真を撮ることが出来た。ピントが少し甘いような気もしないでもないが、趣味でやっている自分としては、このレベルで大満足だ。こうしてテストは成功し、ボックスを使うとよりきれいに撮れることが証明されたのだった。


デジカメ歴9年目にして、積年の願望がようやく実現することになり、ほっとしている。今後は、このボックスを活用して、積極的に色んなものの写真を撮っていきたい。

(80分)