至福

午後、テレビが届いた。取り付けと設定は業者さんに有料でやってもらったので、自分はただ見ているだけでよかった。でもそれを見ているだけで、その圧倒的な大画面とデザインの美しさに惚れ惚れすることが出来た。ただそれだけで楽しかった。


設定が終わって業者さんが帰ると、集まってもらった友人たちと早速ゲームをしてみた。まずはGTA4だ。


すると・・・もうただ、感動してしまった。大画面にくっきりと鮮やかに映る映像は、今までパソコンのモニターで見ていたものとは明らかに別次元の映像だった。今まで知らなかったPS3の本当の性能を今更まざまざと見せ付けられたのだった。


またコンタクトをしていたせいもあってか、まるで画面に吸い込まれるかのような錯覚を覚えた。この没入感は、下手したら恐ろしいことになるぞ、ゲームをやめられなくなるぞ、と恐怖さえ感じたのだった。それほどPS3からテレビにHDMI出力されたHD映像は衝撃的だった。


でもテレビは使ってこそ価値があるもの。せっかく買ったんだから、卒業までに手持ちのソフトを全部クリアするくらいの勢いでゲームを楽しみたいと思った。こんな贅沢をしてしまって、何だか罰が当たりそうな気さえしたが、卒業して実家に帰ってからもそのまま使えるものだし、スモーカーならこのテレビを買えるだけのお金を一年間で煙にしてるんだからそれに比べりゃ全然有意義な使い道だし、来春からの給料を少し前借したんだと思えば後ろめたいこともあるまいと思って、結局は素直に現実を楽しむことにしたのだった。そしてそう思うとバイトしようという気持ちも萎えてしまった。


今日のところは自分の用事もあり、友人と十分にゲームを楽しめないまま解散となってしまったが、なーに、まだ卒業までは4ヶ月残っている。あと数回こういう機会を設けて、みんなでわいわいゲームを楽しみたいものだ。保育園児のころからゲームには親しんできたけど、昔からやってきた「友人と集まってみんなでゲームする」という楽しみ方は、社会人になったらもう二度とできないかもしれない。今まではそれはありふれた出来事だったけど、もうすぐ自分にとっては特別なことに、「過去」になるのだろう。


そうした一つ一つの出来事を丁寧に見つめて、ありのままに楽しんで、胸の奥にそっと大事に取っておきたい、今そう思っている自分がいる。

(20分)