読書:理系バカと文系バカ

著者:竹内薫
出版社:PHP研究所
発売日:2009/3/14
読了日:2009/11/19



図書館の新刊コーナーで見つけて興味を持ち、二日かけて読んだ本。


理系と文系のそれぞれの特徴と弱点を指摘し、両者のセンスを兼ね備えた「文理融合」型の知性を磨く重要性を説く内容となっている。また日本が科学技術立国を謳いながら、国民や政治家の多くが文系的思考に偏っており、いかに工業先進国としての将来が危ういかについての、多くの指摘も含まれている。


これを読むと、文系と理系を区別して扱うことがいかに罪深いかが分かる。文系も理系も、自分がそれに属するからということを言い訳に、自分の幅を広げようとしていない傾向があると思われるからだ。文系人間は「自分は文系だから物理学とかわかんないし」と言い、理系人間は「それは自分の専門分野じゃないから興味ないや」と目をそらしたりするといった具合にだ。それが各人の可能性を狭めることにつながり、ひいては国家にとっての損失にも繋がっていると考えられる。


振り返って自分が文系バカなのか、理系バカなのかについて考えてみると、どちらかというと後者の特徴のほうが多く当てはまるように思った。「理系>文系と思っている」とか「相手が興味を持っていないことを延々と話す」とかいった点で。文系に属していながら、理系寄りの特徴もあるのは、おそらく環境経済学という社会科学と自然科学の要素を包括する学問をゼミで専攻していたことによるところが大きいだろう。ゼミでは常識を疑い固定観念を捨て去ることの重要性を繰り返し教え込まれた。その中で段々と「まずは疑ってかかり自分で考えてみる」という科学的思考が身についていった。自分もかねがね理系の知識とセンスをもっと身に着けたいと思っていたので、この本はそれを目指そうという気持ちをより強くするのに役立った。


しかし、本書の意義は煎じ詰めればそうした、文系人間に対する理系的センスの重要性の啓蒙、という一点に絞られるだろう。というのも、文系と理系の特徴の分類に統計による裏づけがないし、理系人間から見れば著者の経験からの話ばかりで論理性に欠ける部分が多いと判断されてしまうだろうからだ。理系人間に論理で訴えかけるには本書は弱いので、感情的観念的な理解をする文系人間のほうが本書には「なるほど」と思うに違いないし、著者もそれを目的に本書を書いたのだろう。


入試で理数科目にアレルギーを感じ「文系に逃げた」人にはぜひ読んでみて欲しい一冊である。

(45分)