結婚当日

今日の午前中、雨の降りしきる中、市役所の時間外窓口に婚姻届を提出しに行き、受理された。これにより、自分は結婚し、人生の新たなステージに踏み出すことになった。自分の人生における、「第3部」の幕が上がったのだった。((注)第1部:出生〜大学卒業、第2部:就職〜結婚までである。なおこれまで「彼女」と呼んできた人について、本記事以降では、「妻」と呼ぶことにする。)


届出は、妻と二人で行った。自分は昨年12月に買ったばかりの新品のスーツ、妻はワンピースという出で立ちだった。それは、午後に家族だけのお祝い会をすることになっていたからだった。その後、車で長野からやってきた妻の家族と合流し、自分の実家に案内。そこで両家の家族が勢ぞろいしたところで、婚姻届を提出してきたことを報告し、簡単に両家が自己紹介したところで、会食会場である宴会場まで車で移動した。12時前に会場に着いたころには雨が止んでいたので、中庭で記念撮影を行い、その後和室に移動。そこで、結婚指輪の交換、婚約指輪とそのお返しの品である腕時計の改めての交換(いずれも2週間前に相手に渡していたので、お披露目の意味で交換し直した)、家族書・親族書の交換というセレモニーをした後、両家の父親の挨拶と乾杯を皮切りに会食に移った。セレモニーまでは自分の父親が型どおりに仕切っていて、まだ面識の浅い者同士ということもあり、何となく堅苦しい雰囲気であったが、いざ会食が始まると、酒が入ったこともあって賑やかになった。父親はしきりに「めでたい席なので」といって妻の父親に酒をお酌していて、父親同士、というか呑兵衛同士で盛り上がっていた。自分も酒が入って少し緊張が解けてきていたが、始まって2時間くらいしたところで父親から「新郎」としての挨拶を求められたので、やっぱり来たかと思って気を引き締めて、用意してきた言葉を述べた。家族への感謝と、これから新たな家庭を築いていくことへの決意を300字ほどに簡潔にまとめた内容だった。自分が全部一人で話したが、昨夜から妻と二人で頑張って考え、暗記した成果もあり、文章を飛ばすことなく話すことができたし、表情や反応から家族の心にもきちんと響いたことが確かめられたのでほっとした。普段人前で話すことがないのでこういうのは苦手だが、きちんと仕込みをしておいたおかげで、大事な場面でうまく新郎としての務めを果たすことができた。何事も準備が大切だということをしみじみと感じたのだった。会食は14時半すぎに終わり、妻の家族は再び車で帰って行った。妻の父親には、「娘を頼むよ」と言われたので、力強く「はい」と答えた。自分の家族は実家に、自分と妻は実家経由でアパートに帰り、その後の半日はアパートでのんびりして過ごし現在に至る。短いようで長い1日だったが、無事乗り切ることができてとにかくよかった。


こうして自分の左手の薬指には、プラチナの結婚指輪が輝くことになった。本当なのかな、なんて今でも信じられない気分だが、紛れもない現実だ。自分は結婚し、親の戸籍を離れて一家の主となった。彼女は妻になり、自分は夫になったのだ。自分の双肩に色んな責任がのしかかってくることに、身が引き締まる思いがするし、今は自分のことを気に入ってもらえている妻の両親と、今後も良好な関係を続けていけるかどうかということは常に心配である。でも、そうした責任や、難問が、自分という人間を成長させることになるのだろうと思うし、結婚しようと思ったのは、自分の殻を打ち破るブレイクスルーへの期待も大きかった。誠実に、真剣に、現実と向き合い、明るく温かな家庭を築くために全力を尽くすこと。それを貫けば、きっとどうにかなるだろうと、少し気楽に構えているのがいいのではないかと思う。これからの自分がどうなるのか、不安もあるが、それ以上に大きな期待を抱いている。


結婚したからといってふわふわした気持ちではいられない。明日も普通に仕事だし、妻はアパートから新幹線で会社に出勤することになり、また1週間は離れ離れの生活だ。別居婚で始まる新婚生活、人とは違う結婚の形だけど、自分たちで選んだ道だから、その選択に自信を持って、進んでいきたい。

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