震撼線

3月14日(土)に北陸新幹線が開業して、早2ヶ月。開業までは何かと騒がれて注目していたものの、開業日を過ぎてしまえば熱が冷めたように次第に話題にされることも少なくなり、意識として特別扱いすることもなくなっていった。開業日こそ一番列車の通過を家から見たりしたが、今や新幹線が高架橋の上を通過する光景も見慣れたものとなり、すっかり日常の景色に溶け込んでいる。例えば、平日に消防団の朝練をしていると、6時20分ごろに東京からの始発列車が通るのが見えるのだが、それがある種の時報となっていたりする。


ただ、現在でも馴染めていないことが一つある。それは、「新幹線の通過音がうるさい!」ということである。新幹線の高架が自宅のすぐ目の前、30mほどのところを通っており、1時間に4、5本くらいの頻度で列車が通過している。徐々に近づいてくる「ゴーッ」という地鳴りがピークに達するとともに、家がわずかに振動する(戸がガタガタ鳴る震度2くらいのレベル)ので、不快というほどではないものの、気になってしまうのである。速度が速い分、速達タイプの「かがやき」が特にうるさい。


新幹線のメリットというのは、自分としては今のところ特に感じていない。我が家は用地買収にも引っかからなかったし、高架のせいで家から見える景色も変わってしまったので、むしろ何だか損したような気分だけを感じている。また、地域に与える影響としては、マイナスのほうが大きい可能性もある。新潟県内に二つの新幹線が通ることになり、また県内の各地域とつながる在来線の本数も減ったために、北陸新幹線の通る上越地域と、上越新幹線の通る中下越地域(新幹線の名称が紛らわしい)の分断が更に進むことは避けられないだろう。東京へのアクセスにかかる時間は従来より17分短縮されたに過ぎない。速達タイプの列車「かがやき」が停車しないことからJR東日本の視線が新潟県に向いていないのは明らかだし、こんなことなら新潟県を経由せずに長野から立山連峰の下を抜けてまっすぐ富山に向かうルートにしてしまえばよっぽど乗客にとっても好都合だろうに。新潟県が置かれている状況についてはどうしてこうなった、と言うしかない。上越地域として観光やビジネスに新幹線を活用する具体策も確立されていないし、北陸と関東の2方向への人口流出が進むだけになったらそれこそ目も当てられない。自分の目には、北陸新幹線は敵のような存在に映っている。


とはいえ、すでに通ってしまったからには、活かす方策を考えるしかないし、人口流出への防衛策を講じなければならないというものだ。そのためにどんな手を打つかが、今後の上越地域の明暗を分けることになる。


新幹線には東京への出張のため再来週に初めて乗車する予定だ。朝10時までに東京駅近辺の会議場に行かなければいけないのに、前泊を付けず日帰り出張にしたのは、東京に旅費で必要以上にお金を落とすまいという思いからだった。東京からお金が流れて来る仕組みづくりに向けて、自分も潰れかけた脳みそを頑張って回転させて、考えなければいけないと思っている。

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