難題

週末にふさわしい、雲ひとつない快晴が広がった土曜日の朝。自分はクロスバイクで4カ月半ぶりのサイクリングに出掛けた。8時20分に家を出て、12km離れたファミレスに到着したのは30分後。「着きました」と電話で伝えると、10分後、同僚のDK氏が現れた。今回は彼と二人で、海沿いの道を走ることになっていた。関川の堤防上の道を辿って日本海まで出た後、頸城自転車道糸魚川方面に向かって走り、道の駅「うみてらす名立」を目指すという片道23kmほどの短いサイクリングである。DK氏は全身サイクルウェアという出で立ちだったが、自分はネルシャツにジーパンというカジュアルな姿だった。そのため、スピードは控えめにして比較的のんびり走ることにした。花粉の飛散もピークを過ぎたらしく、それほど鼻がむずむずすることもない。風は強いが、寒くはなく、汗もそれほどかかない。走っていてとても爽やかで心地よく、自転車に乗るにはいい季節になったなと感じた。目的地のうみてらすには10時35分に到着。15分ほど休むと、買い物もせず元来た道を引き返した。帰りは追い風だったので、ペダルを漕ぐのが楽だったし、少しスピードも上がった。直江津駅近くのそば屋でかけそばを食べて腹を満たした後、謙信公大橋のところで12時30分ごろにDK氏と別れた。こうして今シーズン最初のサイクリングは半日で終了した。






↑海と桜という組み合わせが、自分の目にはとても新鮮に映った。


その後は、市内で有名な某自転車店で、ロードバイクの購入について相談。迷った末に、クロモリのシクロクロスのフレームにアルテグラコンポーネントを組んでもらうことに決めて、見積もりを作ってもらうことになった。これについては、後日経緯等をまとめて書きたいと思う。店を出たのは、13時半過ぎ。気が付いたら1時間たっていたのでちょっとびっくりした。その足で今度は、高田公園に向かった。



14時5分、夜桜で有名な高田公園に着いた。ちょうど今が満開とあって、うんざりするほど多くの人でごったがえしていた。図書館前の芝生の広場を、自転車を押しながらさまようこと20分。職場の人たち10人ほどがブルーシートを広げて酒盛りをしている場所をようやく発見した。声をかけたら、「よく来たな!」という感じで歓迎されたので、その輪の中に加わった。昼から飲んでいたようで、すでに多くの人がかなり出来あがっている状態だったため、シートの上はお酒やつまみで散らかっていた。最初こそ若手は自分一人だけだったが、途中で自分が声をかけてあった新人が一人加わり、二人で宴会がお開きになった17時半までそこにいた。自分は職場の人との「お付き合い」のつもりで毎年この場に顔を出している。若手があまり来たがらないこうした場に、若手を代表して一応顔を出しておく、という程度の軽い気持ちだった。だが、今回はなぜか複数の人から「お前は若手のホープだ、これからの大学を支えるために頑張ってくれ」という期待感を込めた言葉をかけられて、正直かなり戸惑ってしまった。今、大学は様々な面において危機的な状況にある。そうした状況を打開し、大学の存在意義を世に訴えるために、知恵を絞り行動していく必要がある。その先頭に立つ役割を、自分に期待しているというのである。言われたことは至極もっともなことであり、自分も同じ危機意識を持ってはいたが、それを自分が担えるのか、どうやって進めていけばいいのか、実際の問題として考えてみると非常に心もとなかった。それと同時に、何ら仕事上の実績のない自分が、「若手をまとめている」という程度のことで、「よくやっている」「可能性がある」と過大評価されていることを、怖れずにはいられなかった。自分には、現実的なアイデアも、リーダーシップや調整力を発揮した経験も不足している。何とかしたいとは思っても、それを具体的に実現する力が自分にあるとは思えない。今までの人生で、他者から期待を向けられたことなどなかっただけに、この状況にはただ困惑するしかなかった。自分が担当業務として大学改革というミッションを課せられたことの重さを、深く、深く感じたのだった。


花見の会がお開きになったあと、自分は家までの8kmの道のりを自転車を押して歩いた。自転車に乗らなかったのは、(ノンアルコールビールを持ち込んだにも関わらず)お酒を飲んでしまったからなのはもちろんだが、考え事をしたいという気持ちもあった。夕日と月が交代し夜の帳が下りる中、11000歩も足を動かしたところで、何かアイデアが浮かんだわけではなかった。だが、気持ちを整理したことで、「出来るだけのことはやってみよう」という最低限の覚悟だけは、何とか固めることが出来た。ここからの道のりは、とにかくチャレンジすることでしか前に進めない。今までと同じことを、同じやり方で、同じ気持ちでやったところで、もはや上手くは行かない。仕事も、そしてプライベートも、どっちもチャレンジ精神を持って、一歩ずつ着実に、何らかの成果の実現に向かって頑張ってみようと思う。

(80分:4/13)