天下国家

最近、社会的な課題なり問題なりについてブログで論じることが、さっぱりなくなってしまった。以前からひどく嫌っていたもの、例えばタバコだとか、配偶者控除だとか、環境「保護」という言葉だとか、赤字国債だとか、スマホだとかについても、もう1年以上まともな批判らしい批判を加えていないように思う。それらについての問題意識は依然としてあるものの、様々な観点から考察した上で矛盾や不条理や時代錯誤を批判するほどの「気概」が今の自分には残っていない。過激な意見を誰かの目を気にすることなく自由に論じるための、自己表現あるいは鬱憤晴らしの場として成立したという性格上、このブログはインターネットにおける伝統的な匿名主義を支持し、実践してきたが、今の体たらくを見る限り、匿名であることによる意義は感じられない。最新タイトルには、日記もどきのような書きかけの記事ばかりが並んでいるが、これは自分の意図している姿ではない。このブログは、自分の自己表現の場としては、今時点で十分に機能しているとは言えない状態にある。


自分はもっと「天下国家の問題」について論じたいと、常々思っている。死刑の存廃と冤罪の関連性とか、定年延長と若者の雇用機会の確保とか、女性の社会参画の推進のための配偶者控除・第3号被保険者の廃止とか、原発が稼働しない中で円安が燃料輸入費の莫大な増加をもたらし貿易赤字が拡大し国富流出が進む中で高まる国債暴落と財政破綻の可能性とか、国家という幻想に「何かしてくれる」ことを求める愚だとか、まあ本当に、書いてみたい「大きなテーマ」はいろいろあるのだけれど、そうした「重い」ネタについてはどうしても筆を取る気になれないというのが実情で、書きたいことは何一つ書けないまま、未使用のネタだけが増えていくという、ネタ探しに奔走していた以前の自分と正反対の現象が起こっているのである。「書いて形に残すことで、頭の中の情報を整理する」というのが書くことの大きな目的であることを考えるまでもなく、これは不健全な状態で、自分の頭の中は交通整理がされないままどんどんごちゃごちゃになっている。そうすると、必要な情報が必要な時に取り出しにくくなるため、文章を書こうとしても適切な言葉が「すっ」と出てこないことになり、文章が書くのが遅くなるから、それがいっそう文章を欠くことに対する消極性を生んでしまうという悪循環に陥る。頭の中がこんがらがった今の自分の頭には、新しい情報を積極的に吸収する柔軟性も欠如している。書かないという「病理」は、かなり深刻なダメージをもたらしている。


誰しもそうであろうが、日常生活においては、自由に使える時間というのはごくごく限られている。1日の時間の多くは、仕事だとか、睡眠だとか、食事・家事だとか、誰かの世話だとか、諸々の必要な作業だとかに消えて行くものだ。そうした「身の回りのこと」を考えるのは大切だし、それをなおざりにすることは決して出来ない。しかしその一方で、自分の身には一見直接関係なさそうな「スケールの大きなこと」を、自分自身を含む社会全体で取り組むべき問題として自らの頭で考えてみることというのも、それと同じくらい大事なことだと思う。なぜなら、大きな問題は、ひとりひとりの力なくして変えられないことであり、またそれが変わることの影響は、社会全体に波及し、やがては自分の身にも及んでくることだからだ。それらを他人事として脇に追いやっておいて、いざその影響が降りかかってきたときになって、その責任を誰かになすりつけて非難したり、やれ国が悪いだの社会がよくないだのといったりするのは、身勝手で無責任なことだと言わざるを得ない。自分は、自分の人生に起こったことを決して「人のせい」にはしたくないし、国や世間が「何か施してくれること」を期待する気持ちは一切持っていない。そのためには、自分自身が全ての当事者だという意識が必要になる。世の中に起きている変化や問題は、全ては巡り巡って自分に関わってくることであり、自分も当事者であるという意識を常に持つことが大切なのだ。だからこそ、自分を日々の生活の中だけに矮小化させず、「天下国家」の立場で、大局観を持って世の中の動きを見つめ、考えたいと思っているのだ。そうした天下国家を論じる場として、このブログはこれまで重要であったし、今後も引き続き機能し続けなければならない。つまり、社会の変化に振り回されず、人生を自分の意志の力で切り拓いていくために、視野を広く持って大なり小なりいろんなことを論じることが大切だということだ。だから、ときには、重いテーマについて書くことからも逃げてはいけない。書くことによって、自分と戦い、社会にもの申す気概を示さなければならない。そうした姿勢があるとなしとで、もうちょっと歳を取った時に、「責任ある大人」になるか「無責任な大人」になるかというのがはっきり分かれてくるだろうと自分は信じている。

(80分)