人事シート「その他・要望等」のまとめ(2010〜2016年)

毎年5月は、職場における「人事シート」の提出時期である。経歴や家庭の状況等のほか、異動の希望を書き込むもので、マル秘の個人情報が満載の内容となっている。自分はどうせ叶うはずもないというのと、どこの部署でも仕事が大変なことに大差ないということから、異動の希望は特段書かないのだが、シートの末尾にある「その他・要望等」という欄だけは、毎年ぎっちり書くようにしている。この欄は、自己アピールしたいことや、職場に要望したいことを書くところで、誰にどう読まれるかは分からないが、自分としてはここに今後1年の「決意表明」を書くことにしている。その変遷がなかなか興味深いので、以下に就職1年目の2010年から今年までの過去7年間の提出内容を掲載しておく。なお、本ブログの読点は「、」で統一しているが、以下の文中は職場でのルールに従い「,(カンマ)」を使っている(例外あり)。


<2010年>研修なしで採用初日から配属された部署で勤務することになるのは,実践的な知識や慣習を一から吸収していけ,早く職場に順応出来るという点で,現行のままで問題はないと考える。ただ,文書の書き方の細かいルール(読点には「,」を用いる等)や,電話の使い方(外線にかける時は番号の頭に「0」を付ける等)と応対の方法,超過勤務の申請方法,休暇制度等について,書面でごく簡単な説明があれば,採用された者の初期の困惑や疑問,不安を少なくし,また通常業務の中で教育や指導に当たることになる周囲の職員の負担を若干であれ軽減することが出来るのではないかと感じた。


<2011年>
※なし。


<2012年>職場での若手職員同士の交流,情報交換の機会が少ないので,積極的にイベントを企画して声かけするようにしている。また,自分の視野を拡げるために,消防団やスポーツ等で様々な業種の方々と接する機会を作るようにしているが,今後はこうした場で出会った方たちと本学若手職員を引き合わせ交流の輪を大きくすることにより,個々の職員を通じての本学の一層の地域への浸透,理解の促進を図っていきたい。


<2013年>※なし。


<2014年>社会が大きく変化し,大学改革の必要性が叫ばれる中で,大学職員には,より積極的な役割と,専門的で高度な能力が求められるようになってきている。こうした能力は,一朝一夕で身に付くものではなく,従来型の研修やOJTでは培うことが難しいため,その涵養には継続的かつ地道な取組が必要となる。私は現在,意識改革や中長期的な職能開発を目的として,上記の認識とやる気を共有する若手・中堅職員を集めた勉強会(主に読書会形式)を定期的に開催している。本活動を通じて,参加者が幅広い一般教養や,生涯学び続ける力,主体的に考える力等を身に付けることで,本学の持続的発展に繋げていきたいと考えている。この自発的なSD活動をより効果的で全学的なものとするため,将来的な展開として,大学が書籍購入費等の予算を措置したり,一定時間を限度に就業時間中の活動を認めたりすることが可能かどうかについて,ご検討いただきたい。


<2015年>
本学は小規模単科大学であるため、本来は組織の小ささを武器に、課題等に対しての迅速な意思決定と柔軟で機動的な対処に適しているはずだが、改革担当の業務に1年携わった中では、残念ながらそうした利点は発揮できていないように感じた。むしろ、会議を極力少なくしようという近年の社会の風潮に反して、種々の会議、WGが乱立していることにより、意思決定過程の複雑化と形式化、業務量の増加、それに付随した長時間労働の蔓延が生じており、その影響は最終的に教育研究の成果の減少ないし質の低下に繋がる恐れがある。現行組織の制度疲労から生じるこうした問題に対処するためには、組織による腰の重い対応を待つのではなく、少人数のチームが自発的かつ積極的に「より自然で合理的な方法」を提案し、それを定着させるために周りの人を巻き込んで行動していくことが必要であると考えている。私は今後、若手・中堅職員のみならず、主査級や課長級の上司世代の職員に対しても、様々な働きかけを行い、より活気のある職場を実現したい。


<2016年>
●ver.1(提出せず、一部伏字)
本学の20代の若手職員について、自ら声をあげるより誰かが動いてくれるのを待ち、担当外業務への関心が薄く、成長・上昇志向より現状維持・安定志向が強いと感じます。それらは組織の将来にとって課題があると考え、これまでイベントや勉強会の企画や、他大学職員との交流機会の提供等により、連帯感の醸成や意識への刺激を働きかけてきました。しかし、この5年間で上記の傾向はますます強まり、ほとんど特定の人しか集まらないようになってきています。若手の意識改革と成長を促すためには、H大学やA大学等多くの大学が実施しているように、事務効率化等の特定の課題について若手に裁量と責任を与えたプロジェクトチーム(PT)を設置する等、組織的な強制力が必要だと考えます。昨年度は有志で自発的なPTを試みましたが、業務外の活動では参加者の時間の都合が付かず、年度末の業務繁忙期に活動休止となってしまいました。

●ver.2(提出せず)
現状の事務組織の課題として、従来からの課ごとのセクショナリズムに加えて、担当の細分化による業務の「属人化」(直接の担当者以外知らない状態)や「タコつぼ化」(他業務への関心の低下)が進み、事務組織全体がチームという意識を持って大学全体の利益のために協力することが難しくなっていることがあるのではないかと感じています。近隣に大学が少なく、他大学との人事交流も減少する中で、本学の状況を他大学との比較の中で冷静かつ客観的に俯瞰する機会はあまり多くないと思いますが、第3期が始まり、改革に向けた具体的な取組を急ピッチで進めることが求められている中では、個々の職員がそうした機会に刺激を受けて健全な危機意識を持ち続けることが必要かつ重要であると考えます。担当業務、家庭生活、自発的な能力開発の三者の両立が一職員、一社会人として求められる基本的な姿勢であることを認識した上で、それに加えて組織に刺激や活気を与えられる存在を目指し、今後も試行錯誤していきたいと思います。

●ver.3(提出)
本学の現状の事務組織の課題として、担当の細分化による業務の「属人化」(直接の担当者以外知らない状態)や「タコつぼ化」(他業務への関心の低下)が進み、事務組織全体がチームという意識を持って大学全体の目的や成果のために協力することが難しくなっていることがあるのではないかと感じます。近隣に大学が少なく、他大学との人事交流も減少する中で、本学の状況を他大学との比較の中で冷静かつ客観的に俯瞰する機会はあまり多くないと思いますが、第3期が始まり、改革に向けた具体的な取組を急ピッチで進めることが求められている中では、個々の職員がそうした機会に刺激を受けて健全な危機意識を持ち続けることが何よりも必要かつ重要であると考えます。担当業務、家庭生活、自発的な能力開発の三者の両立が、一職員、一社会人として求められる基本的な姿勢であることを認識した上で、それに加え組織に刺激や活気を与えられる存在を目指し、今後も他大学との交流機会の確保や、若手職員への意識啓発等を試行錯誤していきたいと思います。


最初は単純に個人的な要望だったのが、徐々に組織を活性化させたいという方向に移っていき、2014年以降は若手の立場から抱いた組織に対する問題意識が色濃く反映された内容になるとともに、説得力を持たせるために本題に入る前の「序文」が長くなっている。「生涯学び続ける力」といった中教審答申における概念を引き合いに出すなど、視点がだんだんと大局的になり、「組織をどう変えるべきか」ということに先鋭化、具体化していっていることが読み取れる。課長や事務局長が見たら、何だこいつは、ヒラのくせに生意気だ、と思われるに違いない、向う見ずで無鉄砲なことを臆せず書いているところに、我ながらよくやったものだと感心する。その一方で、昨年度試みた若手による自発的プロジェクトチーム(PT)の活動の頓挫から、2016年度には舌鋒がトーンダウンしてしまっている。自ら実践し証明してきたはずの行動主義に対する自信の低下、有言不実行になってしまったことへの後ろめたさが、書き直された文章の変化に表れている。投入したエネルギーが実を結ばなかったことに対する諦観も一定程度含まれていると言っていいだろう。今までは自分の信念で突き進んできたが、援軍の少なさや、変化のなさに、現在は進むべき方向をやや見失いつつある。業務外での組織変革に十分な時間とエネルギーを割きにくくなってしまった自分自身の環境の変化というのも大きい。自分はこれからどうすべきなのか、組織はこれからどうなるのか、今は大いなる迷いの最中にある。来年度再びこれを書くとき、信じてきた主義に対する自信を回復できているのかどうか、そのカギはこれから1年間の自分の行動にかかっている。

(40分)