反作用

消費税が来年4月から8%に上がることが正式に決まった。個人的には(焼け石に水とはいえ)社会保障財源を確保するための今回の増税そのものには反対ではないが、8%というキリの悪い率になることへの抵抗感は強い。一気に10%にしたほうが、税額の計算が楽になっていいし、国際社会に対して、日本の財政再建にかける強い意思表示として効果的だというものだ。とはいえ、増税には社会の活力を削ぐ作用があり、財政再建をそれ頼みに行なうのは不可能である。同時に様々な政策もセットで行なわなければならない。個人や健康増進や医療制度改革による医療費の抑制、年金支給年齢の引き上げと年金給付の引き下げ、国民皆保険制度に対する国民の理解の促進と保険料徴収の徹底、マイナンバーの活用による世帯・個人の確実な所得捕捉・・・そうした取り組みを着実に前進させることによって、社会保障給付の無駄を減らしつつ、十分な財源を安定的に確保していくことが、社会保障制度の持続可能性を担保するために何より重要となる。


一方で、消費増税によって財サービスの購入にかかる負担が増えるのは、何も個人だけではない。増税によって歳入増になるはずの政府の負担も、一方では増加する。なぜなら、政府自身も物品やサービスの購入や公共事業の発注等では、納税者として消費税を支払う立場になるからだ。仮に税率5%で10兆円の発注をしたとき政府の負担する消費税が5000億円だとすると、8%になったときの税負担は8000億円となり、3000億円の負担増となる。もちろん、増税による歳入の増加を加味すれば、国全体でのトータルでの財政効果はプラスなのだが、今回の増税分が社会保障財源に充てられる以上、各省庁や独法等の個別のセクター単位では、増税分だけ物品費等として使える予算が目減りすることになる。従って、政府機関や地方自治体は、このことを頭に入れて、来年度の増税後に歳出が増えて年度途中で予算不足に陥ったりしてしまわないように、今のうちに増税を加味した予算を立てたり歳出削減を進めたりして、しっかりと手を打たねばならないのである。

(20分+30分)