PlayStationNetworkが4月末からしばらくの間、運用停止していたことなんて、もうすっかり昔の出来事になってしまった感がある。また、その結果として提供された「感謝とおわびのパッケージ」によって、7月初めから1カ月間、いくつかのソフトやビデオを無料DLすることができたのだが、それも結局ほとんど利用しなかった。SCE（ソニー）に遠慮したという訳ではなく、あまり関心がなかったのでちょっと放置していたら、いつの間にか期間が過ぎていたというだけのことである。そんな中で、唯一DLしたあるソフトを、今週はもっぱらプレイしていた。
そのソフトの名前は「The Last Guy」という。ジャンルは「大行列アクション」。プレイヤーは主人公のラストガイを操り、建物に隠れた住民たちを集め、先導しながら、ゾンビが徘徊する街から脱出させるというゲームである。マップには、国内外の実在の街の航空写真（超高解像度）が使われていて、国内の街としては、浅草、横浜、名古屋が登場する。ゾンビに見つからないようにしながら、主人公の後ろにぞろぞろと列をなす住民たちを避難させるだけであり、基本的には「鬼ごっこ」に過ぎないのだが、これがなかなかどうして面白く、昨日今日と、とりつかれたように長時間プレイしてしまった。こんなに熱中してしまったのは、自分が殊にゲームに関して向きになりやすい性格だというのもあるが、やはりゲームバランスの妙だというのが適切だろう。主人公の能力が「走る」と「列の間隔を詰めさせる」という二つしかなく、それらを使うにもスタミナの制約があって、ほんのわずかな時間しか使えない。ゾンビは無敵で倒す術はなく、ゾンビに接触すると即死（ラストガイ、貧弱すぎ！Are you Spelunker？）。連れている避難民がゾンビと接触すると、周囲の建物の中に離散。操作性はよくなく、よく見えない建物のデコボコや壁などに引っかかりやすい・・・といった具合に様々な障害があり、クリアに必要な人数の住民を集めるのは容易ではなかった。もうちょっとというところでゾンビの邪魔が入り、ステージクリアの望みが断たれるたびに、声もなく天を仰ぎ、心にストレスが蓄積されていくのをはっきりと感じたのだが、そのストレスを爆発しそうなギリギリのところで解放するように作られているのが、非常に心憎いところだ。主人公のスタミナを回復したり、敵の動きを止めたり、避難場所までワープしたりすることが出来る「アイテム」があったり、一度に連れていく避難民のラインが長くなるほど安全な誘導が難しくなる半面、ラインで建物を囲むことによって住民を集めやすくなる「囲い込み」という機能があったりして、これらをうまく活用することでゲーム展開を有利に運んだり、危機的状況を打破したりすることが出来るようになっている。主人公の能力はスタミナの上限以外高めることが出来ず、それさえもステージ終了によってリセットされるが、何度も失敗することで、だんだんと適切な攻略ルートというのが分かってきて、それまで進めなかったところに行けるようになるなど、プレイヤーのレベルは1回ごとに確実に向上する。まるで、「不思議のダンジョン」のようだ。敵に覚られないように隠密に行動するのは「メタルギア」的なところがあるし、経験を積みながら頭の中で攻略ルートを組み立てていくのは、パズルゲーム的な要素があるとも言える。1ステージにつき4名だけVIPという特別な住民が隠れており、彼らを集めるとスコアが向上する上に別途記録にも残って、コンプリート魂をくすぐる仕組みになっているのも悪くない。このように、シンプルながら、実に完成度の高いゲームシステムとバランスとが成立しているのである。いやはや、恐れ入った。
もうやめよう、やめようと思いつつ、やめられずにプレイしていたら、結局今夜ゲームをクリアしてしまった。ゲームを始めてからわずか1週間でのスピード仕上げだった。プレイ時間は、14時間ほどだったが、スコアにこだわらなければ、この3分の2の時間でもクリアできただろう。自分は最初こそ高スコア狙いでプレイしていたものの、それではらちが明かない、切りがないと思って、途中からはステージクリアだけに目標を絞った。それで正解だった。全ステージ三ツ星クリア等を目指したら、いくら時間があっても足りない。恐ろしいことだ。CoD MW2のような無間地獄に陥らずに済んだのは幸いだった。今でもたまに「MW2を買い直そうか」と考えてしまうことがあるが、それは絶対やってはいけないことだ。面白いゲームは、恐ろしいゲームでもある。ラストガイは面白かったが、クリアした今、またプレイしようとはあまり思わない。時間は貴重なのだから、適当なところで見切りをつけて終わらせないと、より多くのゲームを楽しむことは不可能になる。このゲームはこれで終わりにして、次はWiiのゲームにでも手をつけるとしようか。
The Last Guy−プレイステーションオフィシャルサイト
→http://www.jp.playstation.com/scej/title/lastguy/
（60分）
