懐かしき


ゲームのCMで、自分の中で一番強く印象に残っており、思い出深いのは、1996年発売のSFCソフト「スーパーマリオRPG」のCMである。パックンフラワーが歌う歌詞が今でも暗唱出来るし、メロディも忘れられない。たまーにふとこのCMを思い出して、車の中や風呂の中で口ずさんだりするが、ゲームをプレイした当時の記憶がよみがえってちょっとだけ楽しい気分になれる。小さいころの楽しい記憶というのは往々にして美化されるものだと思うが、自分にとってはゲームの記憶というのもその中に含まれる。昔やったゲームというのは、すごくシステムがシンプルでグラフィックも荒かったけれど、友達と協力したり競い合ったりして、大勢でわいわい盛り上がっていたから、とても楽しかったなぁ、という感覚が強く残っていて、とても懐かしい。だが、過去のそうした体験があるために、今ではゲームをしていてもついそれと比べてしまって、どうにもやるせない気分になってしまう自分がいる。「過去の記憶より楽しいゲーム体験は、もう二度と出来ないのではないか」・・・そう気付いてから、ゲームを心から楽しめなくなってしまった。今プレイするゲームといえば、物語を紡ぐRPGではなく、刹那的なFPSばかり。今のゲーム作品が昔より質的に劣化したということは決してないと思うのだが、思い出の中で神話化されてしまったゲームに勝ることは、もはや出来ないのではないだろうか。世の中には、自分が未体験の素晴らしいゲーム作品が溢れていると思うのだが、思い出が枷になり、またゲームを楽しむ環境や自分自身が変わってしまったことにより、幼少時のような鮮烈なゲーム体験をする機会は、永久に失われてしまったように思われる。


大人になったら、好きなゲームをたくさん買えて、親から制限されることなく自由に遊べると思っていたのに、いざ年をとってみたらそうは行かない現実が待ち受けていた。それがとても悲しい。

(30分)