2年目

4月1日の今日、入社2年目となった自分の、新しい課での新しい仕事が始まった。


朝はまず、旧部署のロッカーから、新部署のロッカーに、自分の荷物を移した。机の中の物も含めて、昨日のうちに私物を全てロッカーに入れてあったのを、3往復して全て移し替えた。本当はもっと早く出勤して、誰も来ないうちに全て終わらせるつもりだったのだが、あんまり早くこれなかったせいで、急いで走って往復することになった。そのせいで朝から汗をかきまくるはめになった。


新しい課に移ってまず戸惑ったのは、「文化の違い」である。机を拭いたり、電気ポットでお湯を沸かしたりというのは、従来は一番先に出勤した人がやることになっていて、たいてい自分が行っていた。だが、ここではそれが当番制になっていて、交代交代にやることになっているようだった。上司から話を聞きながら、今朝は自分のシマの机を拭くことになった。支給品の文房具の保管場所や、退勤前にゴミ箱のゴミを捨てる場所や、原議書の回し方等については、思いついたときにその都度質問して教えてもらった。またここでは、お茶代その他経費を集めることになっているらしい(前の部署は全てセルフサービスで、一度も集めていなかった)ので、それについては追い追い徴収されることになるのだろう。とりあえず、歓迎会は再来週ということになった。


さすがに2年目ということもあって、課内の人とは、直接話はしたことはなくても、すでに大半の人の顔と名前は知っていたので、朝からあまり緊張もせず違和感もなく、勤務環境の変化には割とすんなり順応することが出来た。学内の人事異動で、辞令交付も課長からだったから堅苦しくなかったし、各部署の挨拶周りをする際も、新しい配属先の名称をすらすら言うことが出来た。ただ電話は、うっかりしていると前の所属先を言ってしまいそうな心配がまだ消えない。


今日は、回ってきた書類を(よく意味はわからないままに)とりあえず眺めたり、検算(電卓を打ち慣れていないからすごく遅い。しかもミスする)したりした。また、文書ファイルを開いて、ものすごい量の数字の羅列に酔いそうになったり、システムを開いてどんなことが登録されているのかを確かめたりした。具体的にどうやって仕事を進めるかということは、今日の時点ではまだほとんどわからなかった。ただ、そのための材料は、色んな資料を読むことで少しずつ集まってきた。エクセルを使って試しに2月の自分の超勤手当を計算してみて、実際の給与明細と同じ数字が出てきたときは、ちょっとだけ感動したし、楽しかった。細かい作業に集中するのは割と得意なので、存外この仕事に向いているかもなぁとは感じた。ただし、周りから仕事の調子はどうだと聞かれた時は、「まだ具体的なやり方は分からない。これから覚えられるようがんばりたい」とやや弱気な答えを述べるにとどめておいた。今の段階では、「大丈夫です」なんて断言できるほどの自信はとてもではないが持つことは出来ない状態だからだ。


学外の一般の方や教員とのやり取りが多く、急な依頼やイレギュラーな事態への対応に迫られることも少なくなかった前の仕事に比べると、今の仕事は基本的に一人で黙々とやる作業が中心で、毎月毎月同じ仕事を繰り返す完全なルーチンワークなので、性質的には正反対だ。また担当者に一定の裁量の余地があり、前例にとらわれない工夫で色々な事態をうまく乗り切ってきた前の仕事に対して、この仕事は全て決まりに則って行わなければならないものであることからも、全く正反対であるといえる。何より、教員を通じての地域貢献という大学職員ならではの仕事と、給与の計算というどんな組織でも必ず存在する仕事という対比で捉えると、両者の違いは歴然としている。そんな両極端な仕事を、短期間のうちに密度の濃い形で経験させてもらえるのは、とても特異で貴重なことであろう。毎日が勉強だと思って、全力で真剣に努力しなければならないと強く感じている。もちろん全教職員に対して責任を負っていることも、常に意識の片隅のちょっと高いところに置いておかなければならないはずだ。


今日は、1日目ということで、上司の計らいもあり終業後は早めに帰らせてもらった。ただ、来週からは頑張ってもらうからと釘を刺されたので、月曜からは本当に厳しい日々が待ち受けているに違いないと覚悟しなければなるまい。来週に備えて、土日は十分な安息を取ることにしたいと思う。

(70分)