知的好奇心

今日は、終業後に1時間半ほど、学内で開催された講演会に行って話を聴いてきた。講師は、チェコから研究のために来学したチェコ人の先生。日本文化などを研究している方だそうで、講演は流暢な(だけど時折ユニークな表現が飛び出す)日本語で行われた。食を切り口に、チェコの歴史や文化、国民性などについて語られた。


講演はスライドを使いながら進められたので、とても分かりやすく、堅苦しくない内容で、最後まで飽きずに聴くことができた。時折混じるちょっとだけヘンな日本語も、場を和ませるいいスパイスになっていた。チェコという日本人にはあまり具体的なイメージのわきにくい国について、チェコの方から直接そのありのままの様子を聴くことが出来たのはとても貴重なことだった。自分自身、これまでは断片的な知識しか有していなかったが、文化や歴史についてまとまった話を聴いたことで、頭の中で散らばっていた情報がチェコというフレーズを中心にがちっと繋がったし、「これもチェコだったのか!」と気づかされることも多くて、とても勉強になった。それに「文化の違い」について考えさせられたのもとてもよい体験だったと思う。講演の中で、チェコの食文化の紹介として人々が集まって豚を屠殺し解体する映像が流され、それを見ながら講師の先生が「豚の血を腸に詰めてウインナーにします。とてもおいしいんです」と言っていた。だが自分は、豚の腹から流れた血がバケツにじょぼじょぼと注がれていく様子や、豚のはらわたを取りだす場面を見て、若干目をそむけたくなる気分になってしまった。日本人には、ちょっと刺激の強い映像だという感じがした。しかし、講演終了後、一緒に話を聴いた他の人とその話をしたところ、「あれは日本人でいえばマグロの解体ショーみたいなものなんじゃないか」と言われて、なるほどと膝を打った。そういう感覚で見ると、海洋国の日本人が真っ二つにされたマグロを見ながら「おいしそう」と思うのと、内陸国チェコ人が豚を見てそう思うのとは同じようなものだと思えてくる。結局、食べるために解体しているのは同じことで、それが魚か陸上の動物かという違いでしかないのである。それを気づかされて、「ああ、これが文化の違いか」と思って興味深かったし、チェコ人に対して親近感がわいてきた。そして国際交流の推進には、やはり人間同士が顔を合わせて相互理解を図ることが重要なのだと、改めて認識したのだった。


こうした講演会は、住民への地域貢献等の目的から大学で時折開催されているし、他の機関が主催するものについても学内では容易に多くの情報を得ることができる。自分は他大学等から送られてくるパンフレット類の学内周知の仕事もしているので、特に多くのものに目を通せる立場にある。知的好奇心を満たしたいと思っている場合には、やっぱり大学にいるということの利点は非常に大きい。自分としては、これこそが大学職員という仕事の最大の福利厚生だと思えるのである。

(45分)