迷惑

今日も図書館にいたらSがやってきた。ここで鉢合わせると、大抵彼のわがままに付き合わされることになる。お互い暇だからだ。


今回は、自分のアパートでみんなのGOLF5をやることになった。つい先日買ったばかりで、まだ封も開けていなかったのだが、対戦プレイしてみると実力が伯仲していてかなり盛り上がった。このシリーズを遊ぶのは初めてだったが、すんなり馴染めてすっかり虜になってしまった。


ここでゲームをやって終わり・・・ならよかったのだが、終末ということもあり、「飲もうぜ」という話になってしまった。お金がもったいないし、明日また飲む約束があるので出来ればこの事態は避けたかったが、まあ仕方ない。餃子をまた作ろうと提案されたが、面倒だからと断ると、「じゃあ居酒屋で」ということになった。居酒屋は一ヵ月半ぶり。宅飲みより金はかかるが、料理を作るのが面倒だったので、それに決めた。これが間違いだった。


歩いて行った居酒屋はアパートから3番目に近いと思われる店。カウンターに陣取り、飲み放題のコースを注文すると、隣の席にいたじいさんが話しかけてきた。


そして1時間15分もの間、そのじいさんにからまれ、話をきかされる羽目になった。普段学生と話す機会なんてないからか、また酒が回っていたのか、じいさんの話は止まることを知らなかった。それがうんちくに富んだ面白い話だったらまだよかったのだが、自分の若い頃の、そして今だったら絶対有り得ないような武勇伝ばかり並べられたので、自分たちはうんざりしてしまった。もう迷惑千万だった。じいさんは「この酒を飲んだら帰るから」といいつつ、いつまでたってもそれを飲み終えず、自分たちにくだらないことを話し続けた。自分はそれまでじいさんに話をあわせて穏便に帰ってもらおうとへらへらと対応していたが、さすがにもう限界を感じていた。そして店員さんに追い返してもらおうかと真剣に考え始めたところで、ようやくにして自分から帰ってくれたが、その時点で飲み放題の時間の半分以上がすでに過ぎていた。ぱーっと飲むつもりで来たのに、そのころにはすっかり疲れ果てていた。


自分はまだじいさんから遠い席にいたので面倒なことになったな、と思わされるだけですんだが、隣接していたSはそんなもんじゃなかったようだ。じいさんの口からほとばしる唾を浴びせかけられ、体を近づけられていたのは相当のストレスだったようだ。じいさんが帰った後、盛んに悪態をついていた。自分も今回のことでさすがに、自分の高齢者に対する認識に揺らぎを感じざるを得なかった。


両親より祖父母に育てられた時間のほうが長くて、じいちゃんばあちゃん子だったこともあり、自分にとってお年寄りは常に尊敬の対象だったのだが、今回ばかりは「老害」という言葉の意味について考えさせられざるを得なかった。そのじいさんは自分たちが教育研究機関の事務職員に内定しているのだと何度も説明しているにも関わらず、それを全く理解せずに自分の考えを押し付けて、日本の技術は他国に流出させちゃいけないだとか、自分の年金のために努力するようにだとかひたすら勝手なことを言いたい放題言いまくっていたのでほとほと呆れてしまった。こういう良識のない人たちが未だ社会の一角を担っているせいで、変わるべき部分を変えられず日本が世界から取り残されているのかな、なんて考えまで派生してしまったのだった。でも社会にはこういう理不尽なこともあるのだな、とある意味で勉強にもなった。


今日の飲みでは散々な目に遭ってしまったが、そうそうこういうことはないと思うので、運が悪かったと気持ちに折り合いをつけて諦めることにした。


やっぱり学生が団体でなく個人的に飲むには、宅飲みがいいんだろうなと改めて思わされた出来事だった。

(60分)