自転車免許と自転車税

近頃、自転車の事故が増えているらしい。

自転車側が被害者になることはもちろん、加害者になるケースも多いという。

原因としては、ルール遵守意識の低さがあるといわれる。

なるほど確かに、お年寄りと子ども以外は基本的に走ってはならない自転車許可標識のない歩道上を堂々と全力で走ったり、歩行者のすぐ脇をスピード出したまま追い抜いたり、路側帯の狭い道路で右側を走ったり、後ろをよく確認もせずに道路を横断したり、夜間に無灯火で走ったり、傘差し運転したり、携帯をいじりながら走ったり、二人乗りしたりする自転車の姿は毎日どこかしらで見かける。

みんなあまりにも無意識に、身勝手に、自転車を運転していると思えてならない。

道交法上の軽車両として扱われる、乗り物を運転しているという意識が、法律にのっとった運転が求められているのだということへの意識が、どうにも欠けているように思えてならない。

例えば、無灯火で運転している人は、「別にライトが無くても前方は見えてるから」と思っていて、実はライトが自分の進む道を照らすためというより、対向車両や歩行者に対して注意を喚起するために取り付けられているということを理解していないのではないだろうか。

自転車好きの一人として、また時にはドライバーともなる身として、乱暴な運転がまかり通っている現実、自転車が歩行者からも車からも疎ましがられている状況は看過できない。

これも全て自転車が誰でも何の条件も制約もなく乗れてしまうことが原因だ。

だから自分は自転車にも免許制度を導入すべきだと思っている。

12歳以上(小学生除く)の人は教習所で自転車の実技と学科の教習を受けて、筆記試験に通って自転車免許の発行を受けないと自転車を運転してはならない、そういう車と同様の制度を設けるのである。

そして、自転車の運転時には免許の携帯とヘルメットの着用を義務付けることにする。

もちろん免許は1〜3年ごとに更新を受けなければならない。

ただしこの免許はほかの自動車免許とは独立していて、車と一緒にまとめて更新を受けることは出来ないということにする。

現在は自転車の交通違反を取り締まろうとすると即刑事罰(前科)になってしまい、警察も取り締まろうにも取り締まれないのだが、免許制にすることでキップを切れるようになり、現状は大きく変わる。

違反した場合にはすぐに反則金を取られるという緊張感にさらされることになり、自転車に乗る人は否が応にも安全運転を意識せざるを得なくなるし、実際に起こる事故はかなり減るはずである。

これに加えて、自転車取得税も導入すればなおいい。

自転車一台につき5000円ほどの税金を一律に課すのである。

税収は自転車免許制度の運用や、自転車道の整備、廃棄自転車のリサイクル費用に充てる。

こうすることで、現在自転車が道路を費用負担ゼロで利用している、文字通り「ただ乗り」の状態が改善されて自転車乗りの地位と発言力が高まるし、自転車道(あるいは専用レーン)が整備されれば自動車や歩行者との接触事故も少なくなる。

また安易に輸入品の低価格自転車を乗るとすぐに壊れてしまい「高くつく」ことなることから、国産の耐久性の高く基本性能の高い自転車が売れるようになると考えられる。

こうして放置自転車問題が解消すると同時に、国内の自転車産業にとってもメリットが生まれる。

ただ、購入時に5000円を取るというと、国民からは「高い」と不満の声が上がるだろう。

しかし、これは社会全体にとって明白な利益を生む制度であるし、一台の自転車を大事に長く乗り続ければ、この程度の初期費用などはほとんど意識されないレベルの負担となると思う。

例えば、自分のケースで考えてみたい。

自分は中学入学時に祖母から購入してもらった当時約5万円のシティサイクルを今でも毎日使っている。一見すると高価な自転車であるが、今年で丸9年乗っていることを考えれば、価格を使用年数で割った一年間の負担額は5600円ほどである。

これが課税によって5万5000円となったところで、年間額は6100円ほどにしかならない。

しっかりと作られた自転車というのは、一般に思われている以上に頑丈なもので、今でも変速機構やライトの機能は支障なく使えている。

つまり、最初の時点でこうした自転車を買って長く使うほうが、一万円の自転車を毎年買い換えるより結果的に安価ですむのである。この事実への理解が進むことが、この制度の社会的な認知の鍵となるだろう。

また、ここまで使い倒してこそ、流行やファッションではない、本当の、本物のエコだともいえる。

唯一気がかりなのは、中古自転車の不法投棄が横行することであるが、十分な性能を持たない安価な自転車が数年のうちに一掃され、それと並行して中古自転車市場が確立されれば、将来的に解決される問題であろう。

とにかく、自転車免許と自転車税の導入が、重要な問題として国民的に活発に議論される日が一刻も早く来てほしい、そう願っている。



<参考URL>
荒川区 自転車免許
http://www.city.arakawa.tokyo.jp/a001/b004/d04400022.html

太田総理 ムダな道路を作るのをやめて全国に自転車専用の車線を作ります
http://www.ntv.co.jp/souri/manifesto/20090508.html

平成18年度 自転車国内販売動向調査年間総括表
http://www.jbpi.or.jp/_pdf/atatch/2007/04/00000429_20070424145007.pdf

(転載:加筆修正10分)