流石

先日、夜中にテレビでNHK総合を見ていたら、不意に初音ミクが歌う楽曲が流れ出して、思わず目が釘付けになった。曲名は確認しなかったが、大自然や地球の映像を背景に、ミクのイラストが大きく映し出されていて、インパクトは絶大だった。0時前の深夜とはいえ、全国放送でボーカロイドの楽曲と映像をこれだけ前面に打ち出すのは、相当に大胆な試みだと思う。考えてみれば、「おはよう日本」でも以前、札幌雪まつりのニュースで札幌が「初音ミクの地元」であるとしてイベント等の特集をしていたし、少し前には「深読み」のエンディングでミクの歌う曲が流れていたのを見た。公共放送として中立的な立場から正確・公正な報道を行う責務を果たしながらも、遊び心や柔軟性を持ち、幅広いサブカルチャーを積極的に受け入れるNHKの懐の深さ、知的好奇心に満ちた自由人の如きその振る舞いには、全くもって流石の一言に尽きる。広告収入の減少に汲々とし、低予算で作ったくだらない番組を垂れ流すことしか出来なくなってしまった民放には、とてもマネ出来ないことだ。最近は、テレビといえばNHKしか見た記憶がない。HDDレコーダーの中の録画番組もほとんど全てNHKだ。NHKにはこれからも頑張って欲しい、自分はずっとついて行くから、と思う反面、NHKに太刀打ちできる相手がいなくなり、テレビ放送を独占するような状況になることへの一抹の不安もまた芽生えた、象徴的な出来事だった。

(25分)