南葉山

今から一か月前の7月10日、Mちゃんと長岡に映画を見に行った。その際、彼からある提案がなされた。それは「この夏に、富士山に登り、頂上で何かしよう」というものだった。突然の提案に驚きはしたが、夏に旅行する予定を考えていた自分にとっては、ちょうどいいとタイミングだったので、二つ返事で即座にそれに賛同したのだった。間もなく、実行の日取りは二人の休みが重なる8月15日〜17日に決まった。それから一カ月、自分とMちゃんは打合せを重ね、富士登山の計画を立て、道具の準備を進めてきた。宿も取ったし、交通手段も確保した。あとは、当日を迎えるだけ、のように思えた。


しかし、登山の前に二つの懸案が立ちはだかっていた。一つは、自分の左足のねんざの問題。ほとんど完治しつつあったが、富士山という日本一の山に登るにベストなコンディションとは言い難かった。足に過度な負担がかかり、登山の途中で痛みがぶり返しはしないかという不安があった。もう一つは、二人の体力の問題だった。お互い、普段それほど運動していないし、ましてや登山など数年〜十数年ぶりなだけに、富士山をいきなり、しかも二合目から登るというのは暴挙なのではないかという思いがあった。そのため、富士山の前に、力試しにまず手近な山に登ってみようということになった。新品の登山靴を足に慣らすという意味もあった。


それで、今日の午前中、二人で上越市の南葉山(949m)に登った。標高500mの地点にあるキャンプ場まで車で行ったので、自力で登る高さは実質500mほどしかなく、ちょっとした登山のつもりだった。しかし、その認識は甘かった。登ってみて、山登りの肉体的な辛さを痛感させられることになったのである。結論から言うと、上りの途中で、富士登山は中止することに決まった。ただ、すでに宿等は予約されており、行くことは行かなければならないため、「レンタカーで静岡ぶらり旅」に衣替えしようということになった。ドライブしたい気分だったので、それはそれでよかろうと考えたし、御殿場高原ビールをもう一度味わえるのは楽しみでもあった。富士登山を目指して高まっていた旅前の緊張感は、こうして一気に和らいだのだった。


9時前から、13時前までかかった南葉山の登山について、以下に簡単に総括する。まず、登山前の懸案について。先述のとおり体力は厳しいということがわかったのだが、自分の左足は案外大丈夫であった。下りで体重がかかる場面では、少々右足より負荷を感じることもあったが、特段痛むことはなかった。靴が足にしっかりフィットしていたのもよかったのだと思う。次に、登山中に発生・発覚した問題について。明神沢ルートから上り頂上に達した後、木落とし坂ルートから下山するというコースだったのだが、こんな問題があった。①明神沢ルートは下草も刈っていない「茂み」でアップダウンも激しく道も狭く危険な悪路だった。②虫が非常に厄介だった。Mちゃんは長袖を着ていた一方、自分は半そでだったので、腕をかなり虫に刺された。「登山ではどんなに暑くても長袖を着よ」という教えを途中で思い出して反省した。上りの大半の部分で、アブだか蚊だかハチだかが頭の周辺をくるくると衛星のごとく飛び回っていて、羽音がうるさかった。耳障りなので振り切ろうと思ったためにペースが速くなり、結果的に消耗した。リアルに、SFCの「スーパードンキーコング3」の「リバーサイドレース」状態だった。③装備が貧弱かつ不十分だった。シャツの着替えが1枚しかなかったので、途中でシャツがびしょびしょになり着替えたくなっても、着替えられなかった。唯一の着替えは下山後、車に乗り込む前に使われた。そのため、途中から背中がぐっしょり濡れて気持ち悪かった。タオルの替えもあったほうが便利だったろう。それくらいに、猛烈に汗をかいた。また、食べ物を持ってきていなかったため山頂到着時点で腹ペコだったし、持って行った水分が全然足りなかったので(アクエリアス500mlペットボトル、1本のみ)消耗を早めてしまった。④上り始めた時間が遅かった。登山は日が昇る前に出発するのが基本だ。夏であれば4時前に登山開始するくらいが普通だ。しかし、自分たちが登山道に入ったのは、9時前だった。そのため、山頂に進むにつれ、日が高くなり、どんどん暑くなり、どんどん汗がしたたった。汗で日焼け止めも流れ落ちててしまった。


・・・ほかにも書きたいことはあるが、明日の朝は早いので、ここまでにしておこう。ちなみに、13時前にキャンプ場に戻り、着替えて、車で平地に下りた後は、温泉で2時間ほどゆっくりして、16時にMちゃんと別れた。午前だけで終わり、昼飯を食べるまでもなく解散となるはずだった登山は、予想外に長引くことになったのだった。実は、まだ明日の道具の準備が整っていないので、本記事のアップ後、急いで支度することになるだろう。時間があるのに余裕をぶっこきすぎて土壇場で焦ることになってしまう癖は、いつまで経っても全く改善する気配がない。自分の最もダメな部分の一つだとつくづく思わざるを得ない。



↑キャンプ場のロッジ。シャワーもあるが有料なので使わなかった




↑明神沢ルートの登山口



↑上りは、左右上下から草木が行く手を遮る悪路だった



↑ただし、綺麗な水が流れる沢も多かった。見つけるたびに休憩した




↑途中、歩きやすい林もあったが、あくまで限定的なものに過ぎなかった




↑山頂



↑標識と祠のほかは何もなく、景色も見えなかったので、達成感はいまいち



↑下りの木落とし坂ルート。勾配のきつい場面はあったものの、道は広く草も刈られていて歩きやすかった。上りの半分の時間で下りられた。6合目に水が飲める場所(延命清水というらしい)があり、大変助かった。命の水だった




↑時折視界が開けて高田平野が一望でき、目を楽しませてくれた

(75分)