戦略

昨夜は部長、室長、先輩、自分の男4人で18時頃から飲みに行った。ちょっと変わったメンツになったのは、部長のほかには室長のお誘いに乗る人がおらず、やむなく部下の自分たちが人数合わせ的に参加することとなったため。同じ部署で毎日顔を合わせている先輩(4つ年上)、室長の二人はともかく、部長は普段個室で職務をしていてあまりお目にかかることのないお偉いさんなので、最初はちょっとかしこまってしまった。だが、そんなに我の強いわけでもない、割と普通のおじさんなのだと分かってくると、特段その地位を意識することもなくなった。そもそもテーブルの座席的に対角線の位置だったので、直接お話をする機会はほとんどなかった。


水曜日はノー残業デーである。そんな日に飲み会をするのは、結局形を変えての残業みたいなものではないだろうか。そんな考え方がどれだけ浸透しているのか知らないが、実際一昔前に比べると、職場の飲み会への参加率は随分低下しているそうだ。昔は参加しないと理由をしつこく聞かれたらしいし、酒を飲もうとしない人は殴られたこともあったという。自分も基本的には、上司が同席する飲み会には積極的に参加したいとは思わないので、職場の飲み会に消極的な風潮が広がるのは助かるといえば助かるのだが、あんまり断ってばかりでは上司の機嫌を損ねるし、何より情報交換や人付き合いの範囲を広げる機会を失うことになる。だからといってさすがに媚を売るかのように毎回参加したくもない。まだその適切なバランスを探りかねているのが現状である。


しかし飲み会に人があまり参加しないのは、上司に自分を売り込みたい者にとっては、好都合なことだろう。上司と独占的に会話するチャンスを得ることが出来るのだから。昨日の先輩はちょうどそんな感じだった。先輩は願わくば他大学に転籍したいと常々思っている人なので、自分の要望を何とか叶えてもらえるようにと、隣席の部長に対しヨイショしたり、自分のこれまでの頑張りをアピールしたりしていたようだ。先輩が部長を独占していたため、自分は自分で室長と二人で会話しなくてはならなくなった。ここで室長をおだてたり、面白いことでも言ったり出来れば、少しは目をかけてもらえ、今後の異動や昇進に有利に働きかけてもらえる可能性も生まれるのだろう。だが、自分はあいにく全然そういう意図の持ち合わせがなかった。そういう政治的なことはダメだ。機嫌を損ねない程度に、調子のいいことを言ったりはしたが、基本は自分の思っていることをそのまま話しただけだった。下手に自分の能力を誇張して墓穴を掘るのは困るし、過大評価されて責任が重くなるのも嬉しくない。自分はあくまで、自分の身の丈にあった生き方をしたいのである。ただ常勤職員の中で最年少で地元出身でもあるためか、室長は室長で、自分にこの大学をこれから背負って立っていく役割を果たすことを期待してくれているようだ。そのために、色んな人と交流して、人脈を広げて欲しいと思っているらしい。自分はそんな社交的な人間じゃないのに、参ったなぁと思ったが、ずっとこのままでいいとは思っていないのもまた事実なので、少しは頑張らなければならないなと気を引き締めたのだった。でも時間の経過に伴って、室長が段々酒を強要するアルハラオヤジになっていったので、酒を断るのが大変だった。ビールならちょっとやそっとでは酔わないが、焼酎は相変わらずダメだ。ただ途中からもう一人参加してきて、室長のお相手役から解放されたのは幸いだった。自分は2次会の途中で家族の迎えを理由に退散したので、二日酔いはしないで済んだ。平日に二日酔いをするのは最悪だ。オフで仕事に負の影響を残してしまうことだけは今後も引き続き避けるように努めたい。そのためには「酒に強い」と思われないようにしなければならない。顔には出ないが、実際強いわけでは全くないので。


飲み会の会費が、今回みたいに全て上司持ちだったら、もっと参加する気にもなるかもしれないんだけどな。

(90分)