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他大学に転出することになったN先輩のために、若手有志による送別会を行おう――そう思い立って、昨日から急遽、企画を始めた。以前に「やってもらえたらうれしい」的なことを本人がぽろっと口にしていたのを聞いたことがあったし、他に企画してくれるような人がいなかったので、自ら幹事を買って出たのだった。もっと早くから準備をしておくべきだったし、実際「慰労会」とかいう名目で予め日程調整をしておこうと前々から考えてはいたのだが、日々の業務に追われる中でつい後回しになってしまい、この土壇場になって、ようやくにして動き出したのだった。幹事というと何かと面倒なイメージだし、自分自身は学生時代も含めて片手で数えるほどしか経験がなかったが、お世話になった先輩への恩返しのためと思えば、この程度のことは何ら煩わしくはなかったし、むしろ光栄なことですらあった。


昨日の時点で、すでに残り時間は1週間を切っていた。ここから新たに日程調整をして参加者を募るとなるとかなり難しい。そこで自分は、あるアイデアを思いついた。それは、木曜日に行われる「職員有志送別会」の後に、「二次会」の位置付けで場を設けるというものだった。「一次会」のほうは先週のうちにすでに数名の職員の企画により案内が送られており、参加する意向を示していた人が多かったことから、この後であれば別に日を設定するよりも集まりやすいはずだと考えた。また、21時から開始という時間設定にすることで、忙しくて早い時間には集まれない人であっても、参加しやすくなるのではないかとも思った。このアイデアが功を奏し、わずか1日で若手のほとんどの職員から参加の申し込みをもらうことが出来た。残りの問題は会場だったが、ネットで調べ目星を付けた店に電話をかけてみたところ、拍子抜けするほどあっさりと席の確保に成功。2日前と直前なだけに、無理ではないかと思っていただけに、かなり意外だった。時間が少し遅いのがよかったのかもしれない。やはりやってみなくちゃ分からないものだ。人を集めて会場をセットしさえすれば、自分の役割はとりあえず8割方完了といえた。挨拶だの進行だのといった堅苦しいことは若手の場では一切なしにしようと自分の中で決めていたので、あとは当日の必要最低限の調整役さえ務めればいいと思っていた。ただ一方で、若干、物足りないような気がしたのも事実だった。何か一つ、先輩に感謝を伝えられるような、そして場が盛り上がるようなことが出来ないだろうか。そう思って、しばし考えを巡らしてみて、はたと思った。「そうだ、写真だ、写真がいい」と。これまで、飲み会やイベント等に出て撮りためた写真が、自宅のPCの中に残っていた。この中から、いいものを選んで印刷し、アルバムを作って渡してみたら面白いのではないか。その場でみんなで見れば盛り上がるし、先輩への記念品にもなる。ありふれたシンプルなアイデアではあったが、それだけに効果的で印象的であろうと思われた。前から「何のために撮ってるの?」とよく聞かれては、趣味だとか何とか言ってお茶を濁してきたが、これでやっと活躍の出番が生じることになった。それを実行に移すため、今夜は仕事帰りの21時ごろに蔦屋書店に寄ってちょっとしゃれたアルバムを買い、写真を20枚ほど選んでプリンターで印刷した。全て自前かつ自腹での調達だった。写真を振り返って眺める中で、2つの思いが交錯した。一つは、「撮っておいてよかった」ということ。撮影当時のその場面の雰囲気がよみがえるようで、懐かしく楽しい気分になった。もう一つは、「もっときれいに撮ればよかったのに」ということ。ノイジーでブレの入った、印刷に適さない写真がかなり多かった。飲み会となると、どうしても夜で、薄暗い会場になってしまうのが悩みの種だが、何とかしてもう少しきれいに撮れないものか。検討してみる余地はあると思った。コンパクトデジカメでは撮像素子が小さすぎるから、サイズが大きく画素面積の大きい(画素数は少ないほうがいい)デジカメを使うとか、フラッシュを2回発光させるとか、


写真は丸1日乾燥させなければならない。従って、木曜日夜の送別会に間に合わせるのは本当にぎりぎりだ。こんなふうに平日にあるまじき夜更かしにもなってしまう。しかしそれでも、これはやるべきことだと思う。明後日の送別会では、幹事としての役割を最後まで果たしたいと思うし、今後ともありとあらゆる場面で、積極的に、自信を持って写真を撮って行こうと思う。カバンにいつも入っているデジカメがいつでも活躍できるように、マメな充電を心がけたい。

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