新機軸

明日から3泊4日で九州・長崎を旅行してくる。高校時代の友人のH氏との旅である。毎年9月は彼と旅行に出かけるのが恒例となりつつある。今回の主たる目的地は、長崎市の沖合に浮かぶ島、端島。通称、軍艦島である。かつて炭鉱の島として栄え多くの人が住んでいたものの、現在は閉山しており無人島となっている。昨年旅した際に、彼が次回の旅行先として提案した場所であり、崩れかけた高層ビルがひしめく廃墟の島、SIREN2のモデルになったところとして、自分もかねがね興味を抱いていたことから、今回の目的地として決定したという経緯がある。自分は一旦新潟まで北上し、新潟空港から福岡空港へ飛行機で移動、福岡空港でH氏と落ち合い、そこからレンタカーを借りて長崎を目指すという段取りになっている。軍艦島以外にも、平戸や佐世保長崎市内、雲仙岳といった主要な観光地を巡るつもりだ。今夜は、クローゼットから引っ張り出したスポーツバッグに、服や本、デジカメ等の荷物を1時間半ほどかけて詰め込んだ。H氏は現地の郵便局に予め荷物を送ると言っていたが、自分は大したものは持って行かないため荷物がバッグ一つに収まるので、直接持って行くことにしている。旅行用品のチェックリストがないので、部屋の中を見渡して目についたものを、あれはいるかな、これはどうしようかな、と考えながら荷物をまとめるような感じに毎度毎度なってしまう。そして毎回、出発前に忘れ物がないか心配になり、実際充電器等の忘れ物をする。いい加減、チェックリストを作るべきだと思うのだが、今回の旅行には間に合わなかった。またしても次回の課題という訳だ。


しかし、今回の旅行は、今までに何度か実施してきた「○○一周」系の旅行に比べると、かなり大きく変わった内容になっている。第一に、一周が目的ではない。従来は、四国一周、中国地方一周というように、車でその地方の外周を一筆書きに一周することが最大の目的だった。そのため、コースが主に海沿いとなり、車の運転時間も長く、時間の制約から観光はさらっと眺める程度になってしまうことが多く、極めて強引な移動を強いられることになってしまった。それだけの犠牲を伴いつつも、一周したところで「何とか間に合った」と安堵するのみで大した満足感はなく、一言でいえばかなり不毛であった。そのため、前回の旅行の解散前に「今後は一周を目的にはしない」という認識でH氏と一致していた。第二に、時間にゆとりがある。今回は、綿密なスケジュールを組んだ計画書を初めて作成した。この中では、何時までにどこに移動すればよいか、そこで何時間滞在出来るかということを細かく定めてあり、次の行動が明確に示されてある。今までは、「あそこに寄る?寄らない?」ということをその場の判断で決めて、その都度ルート変更をしていたことから、非効率で時間のロスやミスも多かった。計画書の存在によって、そうした無駄な迷いが排除されるため、限られた時間を効率よく使うことが可能になる。また計画では、車の走行距離に対して移動に要する時間を多めに取ってあり、多少寄り道をしてもおつりがくるくらいの「遊び」を持たせてある。旅先で目に留まったものがあったら足を止めて、もっと楽しんでみようという趣旨である。走行距離自体も、4日間で600km程度と、3日間で1000kmを走った昨年の旅行に比べてかなり短くしてある。これも一周を目的としなかったことにより実現したことで、時間に追われることなく、余裕を持って安全運転で移動できるように十分な配慮を込めた。第三に、観光に重きをおいている。今までは、めったに行けない土地を訪ねているにも関わらず、そこをしっかり観光するという態度が十分でなかった。その土地の風景、食べ物、歴史・文化、人々の営みといったものに、きちんと目を向け、触れて、感じとっていたとは到底言えないような状態だった。旅すること、観光することとはそもそも、そうした体験を通じて、日常とは異なる空間にいることを楽しむものであるはずだ。その当たり前のことが、従来はできていなかった。それを前回大いに反省したことから、今回こそは「当たり前のことをしっかりやろう」と固く決意するに至ったのである。今回は、巡る観光スポットこそ多くないものの、そこを楽しむのに十分な時間を割いてある。また今回の大きな特徴として、早朝、夜間の移動をなくしたこともあげられる。特に夜間は景色が何も見えず、どこを走っているのかも分からなくなる。これでは興ざめだし、せっかくの旅を台無しにしている。何気ない車窓の風景さえもないがしろにはしない、そうした姿勢を今回の計画では強く打ち出している。


今までのレンタカーでの旅は、とにもかくにも強引であった。時間に追われ、楽しむものも十分に楽しめず、終わったときにはただただ疲れ果ててしまっていた。休みを取って来ているのに、仕事より疲れてどうするんだといいたくなるような有り様だった。今回は、あまりあれこれ悩まずに、計画をなぞりながらリラックスして楽しめるような、適度に気の抜けた旅に出来ればいいなと思っている。そのために、明日金曜日と来週火曜日は夏季休暇を使って休みにしてあり、土日月の三連休とつなげて五連休を用意した。4日間使って旅行して、最後の1日は家で休むという寸法だ。これで来週水曜はすっかりリフレッシュして仕事を再開できるだろう。計画にはゆとりを持たせたとはいえ、飛行機の時間の制約上、初日の出発と最終日の帰宅は遅くなってしまう。明日は朝5時50分に家を出なければならない。実は記事を悠長に書いていられる場合ではないのだ。旅の無事と成功を願って、急いでベッドに潜り込むとしよう。

(65分)