抜歯 その2〜休み損〜

早帰りして損した、と思った。せっかく夕方2時間休みを取って、歯医者に行くために早く帰ったというのに、診療が3分と経たずに済んでしまったからだ。今回は親知らずを抜いた部分の抜糸をするのかと思っていたのに、医者は口の中をさっと眺めて、「まだ穴が空いてますけど、普通に歯磨きして大丈夫です。次回は左の上の親知らずを抜きます。今抜いていってもいいですけどね(笑)」と軽い言葉を口にしただけで診療を終えてしまったのである。どうやら抜糸はまだ先のことらしい(注)。診療費はわずか130円。こんな簡単に終わるなら、先週土曜の午前中に予約を入れておけばよかった。だがそんなことを思ったところでどうしようもないことだった。


歯医者のことはともかくとして、今日は「半日休や時間休はよっぽどでない限り取らないほうがいい」という教訓を得ることになった。というのも、これらを取ると何かと面倒だからだ。その面倒とは、手続き上でのものはなく、他の人たちとの関係性においてのものである。例えば休む当日(朝から休む場合は前日)には、直属の上司と、室長に対して、「今日は○時から休ませていただきますので、よろしくお願いします」という風に一言伝えておかなければいけないし、その後ないし翌日に再び出勤した際には、今度は「昨日はお休みをいただいてありがとうございました。お世話になりました」などとお礼のあいさつをする必要が生じる。これが面倒くさい。一番面倒なのは、午前だけ休んで午後から出勤した時だ。職場に入った時、朝から出勤している他の職員に対してなんと挨拶をすればいいのか、思いつかない。「おはようございます」は時間的におかしいし、「こんにちは」でも不自然だ。「お疲れ様です」は向こうが言うべき言葉だろう(とはいえ、自分が迎える立場だとこれを使うのは、何だか引っかかる感じがある。だって、まだ疲れてないはずだもの)。日中の時間帯に初めてあったときの、ややかしこまったワンフレーズの挨拶というのがない(と言いきっていいものかは不安だが)のが、日本語の機能上の最大の欠陥だと思う。どうにか使えそうなのは、「どうも遅くなりまして失礼しました」といった言葉だろうか。今回のように早帰りする際には、仕事が中途半端になるというのもすごく気になるところだ。今日なんて、もうちょっとで書類が起案(上司の決裁を取る文書を作成すること)出来そうなところで、やむなく中断して帰ることになったので、すごーくもやもやした感情が残ってしまった。それに、仕事をしている他の職員を前にして、日が高いうちに私用で帰るというのも非常に気が引ける。一応、スケジューラに年休の予定と用事を入力して、周知を図ってはいるものの、「あれ?何でこいつ急に帰ったんだろ」といぶかしがる人もいるかもしれない。要するに自分は、余計な手間や面倒事を避けたいのである。半日休や時間休は、休みを取ることによるメリットよりも、その前後の連絡・挨拶という手間のデメリットのほうが大きいと感じるのだ。それなら1日休のほうがずっといい。こういうある種のホウレンソウ的な部分が、近頃自分はすごく面倒に感じられるようになってきつつある。この程度のこと、口頭で報告しなくてもいいだろ、メールでCcしとけばいいんじゃないか、そんなふうに思って、実際そうすることも少なくない。それを上司がどう思っているか知らないが、もともと注意や叱責をしない人なので、表面上は何も感じていないようなふりをしていつつ、腹の中では自分のことを怒っているかもしれない。資料を刷るときは足りないより余ったほうがいいように、報告も足りないよりは余分なくらいに頻繁にするほうがいいのかもしれない。このバランスの取り方が以前より下手になっている気がするのは、自分が怠慢を覚え始めたということなのかもしれない。今一度初心に帰ることが必要なのかもしれないな。


とりあえず歯医者は次回からは平日には行かないようにするつもりだ。平日の昼間に表を歩くってのもなんか嫌なもんだしね。

(50分)


<追記:注>
実はこのとき抜糸もされていた。糸を抜くと言われなかったので、自分が気付かなかっただけだった。