ありがとう

何で人工衛星のことを考えて涙が出てくるんだろう、何でこんなにも胸が熱くなるんだろう…。大気圏に再突入した人工衛星はやぶさ」が、眩く光輝きながら燃えてバラバラになっていく映像を報じた朝のニュースを、自分は胸を締め付けられるような思いで見つめていた。


何度も故障して、もうダメかと言われつつそのたびに復活して、満身創痍になりながら60億kmの遥かなる道のりをくぐり抜けて、とうとう地球に帰ってきたはやぶさ。真っ暗な宇宙空間での7年間、寂しかったろうな、辛かったろうな。それをじっと我慢して、よく帰ってきてくれたね、本当によくぞここまで頑張ったね。おかえりなさい。


はやぶさの見せてくれた執念と勇気に、感動し、賛美の言葉を送らずにはいられなかった。


やっとふるさとに、地球に帰ってきて、でも最後には地表に達することなく燃え尽きて消えてしまう。壮大でありながら、閃光のごとく短いその一生、その最後の儚さを思うと、もう何度も何度も涙が溢れてきて、止まらなくて、どうしようもなかった。自らは燃え尽きながらも、地表にたった一つだけカプセルを残していく。そしてその中にあるのは、太陽系誕生の謎を解き明かすかもしれない、星のかけら。こんな素晴らしいロマンが他にあるだろうか。こんな劇的なラストシーンを見せられては、どんな大作ハリウッド映画もかすんでしまう。


はやぶさが宇宙から届けてくれた、ノンフィクションの一大スペクタクル、そして命を賭して残してくれた果てしない夢。自分はそれを決して忘れない。いつまでも、いつまでも、決して。

(60分)