面談

今日の始業後の最初の業務は、室長との個人面談だった。


面談というのは、人事評価の一環で行われるもので、事前に作成し提出してあった業務の達成目標などを記した書類を元に、上司から現状の業務の進め方や目標とする成果などについての質問や指摘がなされるものである。受験勉強や就職試験を通過してやっと就職したからといって、もう自分の客観的な能力を試される機会からは解放されるという訳ではない。企業同様、大学においても、職員の能力に対する人事評価は半年あるいは1年というタームで行われる。職員は、上司から監督されていることを意識し、常によりよい成果を出せるように不断の向上心を持つことを求められているのである。


自分の場合は、まだ採用されて一ヶ月半ほどであり、また自分の分掌する業務の全体像を把握出来ておらず、またこうした面談で何が問われるのかも知らなかったため、受けるまではちょっと緊張していた。加えて以前の飲み会で二次会に行った際に、室長から真顔で「お前は何のためにここに就職したんだ」と訊かれてたじたじになって答えられなかったことがあったことから、もしあのときと同じ問いかけをされたらどうしようかという不安もあった。それで自分の気持ちを少し整理しておいたりもしていた。


結果的には、そうした不安は杞憂に終わった。室長は手厳しい質問はして来ず、むしろ職場環境で不安を感じていることはないかとか、周りの職員は20代の若手が少なく年上ばかりだが大丈夫かとか、困ったときはいつでも相談して欲しいとかいった、新採用の自分に対するメンタル的なフォローに関する内容に比較的多くの時間が割かれたのだった。もちろん本来の目的である、分掌業務に関する内容も問われたが、これは具体的な数値や時期の目標を設定して、半年後に成果の検証や反省をする際に分かりやすいようにするようにということを求められるに留まった。それとて非常にやわらかい物腰での求めだったので、安心するのを通り越してちょっと拍子抜けだったほどだ。室長は外見的にはコワモテだが、実はとても部下思いで優しい人なのかな、なんてつい自分の見識を修正させられてしまった。ただ、自分の業務は基本的に、外部から依頼や申し込みがあってからそれに反応する性格の、いわば受身タイプの仕事が中心であるため、時期や数値での達成目標を設定することを求められるのは、ちょっと困らないでもなかった。目標の再設定後、自己評価の書類を再提出するのだが、締切までには約2週間の時間があるので、じっくり考えてみたいと思う。


そんなわけで、固執での室長との面談は、割となごやかなムードに包まれながら20分ほどで終了した。終了時に、職員の野球部にまたまた勧誘されたが、今回もまたまたお茶を濁す感じで断った。しかし、人と向かい合って話すときって、視線をどこに持ってけばいいのやら、大変迷ってしまう。今日は視線が泳ぎまくっていて、酔ってしまいそうなほどだった。目ばかりを見るのはアレだから鼻を見ろとか、たまにずらせとか言うけど、よくわかんないな。

(45分)