ジョーシン

自分は昔から、ジョーシン派である。


ヤマダ党員とかベスト主義者とかいうのが存在するのかは知らないが、とにかく電化製品の類は、ほとんどの場合ジョーシンで買うのである。


今のアパートにある電子レンジや冷蔵庫、洗濯機、パソコン、プリンタ、デジカメ、プレステ2プレステ3ポメラ、除湿機、電気スタンドからCD-Rにいたるまで、電気が通るものはほとんど全てがジョーシンで買ったものである。今数えてみて我ながらその多さにびっくりしたが、本当にどれもジョーシンで買ったものである。一体いくら貢いだのだろう。とんでもない額になることは間違いない。


なぜ自分はこんなにジョーシンばかりひいきにするのか。


それはただ単に、中高時代、家から一番近い電器屋ジョーシンで、用のあるなしに関わらずそこによく通っていたからだ。


高校時代は、学校帰りに「電器屋詣で」するのが趣味だったので、時には帰り道と正反対のジョーシンの大型店まで足を運ぶこともあった。そこから家までは15kmほどあり、自転車で40、50分くらいかかった。当時は結構根性があったと思う。


そこまでして行くからには、手ぶらで帰るのもなんなので、結局何かしら買って帰ることになる。そんな中で、いつの間にかジョーシンから「上お得意様」として認定されていた。


こうなるとジョーシンから定期的に「割引券」や「プレゼント引換券」(皿とか、エコバッグとか、タッパーとか、ブランケットとか色々もらった)が届くようになり、それを使うために店に行って買い物をするとポイントがたまって、使わないともったいないからとまた店に行く・・・ってな感じで、すっかりナニワ商人の策にはめられていたのである(ジョーシンは大阪に本社があって、タイガースのスポンサーでもある)。


で、今月は自分の誕生月なので、例年よろしくジョーシンからバースデーを祝うハガキが届いた。


店に行くだけで300ポイントをもらえるという特典つきのハガキである。往復のガソリン代を考えれば、それを貰いにわざわざ出向くというのは全く得になっていない。トントンか、せいぜい50円かそこらしか残らない。しかしこれがなかなかどうして理屈どおりには行かないもので、「くれるというなら行かなければ」という気持ちになり、特に買いたいものもなかったが、「CD-Rが尽きたな(普段全く使わないけど)」と思って、仕方なく最寄りの大型店まで足を運ぶことにしたのだった。まんまと乗せられたわけだ。この手法を最初に考えた人は全く頭がいい。


近所にあったジョーシンは、高3の冬、センター試験の頃に閉店してしまったため今は無い。そこなら近くで済んで楽なのだが、今は少し遠くの大型店まで行かざるを得ない。閉店セールでは叩き売りされていたポータブルスピーカーを買ったが、それは今も実家でiPodを聴く際に役立っている(アパートに移したせいで、自分の部屋にオーディオ設備が無いので)。


店には一人で行った。昨日よろしく、軽トラでだ。今年1月に初めて一人で運転した際は、終始体を強張らせて、背中に冷や汗をかいたものだが、それも今となっては昔のこと。環境経済学について専攻した身でありながら、「あーやっぱMTは楽しーわ」と思って不謹慎に(?)運転していたのだった。一応環境を汚して悪いことをしてるという自覚を忘れないために、毎回誰に対してか分からないが「ごめん」と心の中でつぶやいているのだが、そんなことはまあ極めてどうでもいいことである。


今回はCD-Rだけ買って、さっさと帰ろうと思ったのだが、そうは問屋が卸さない。ついつい色々見て回ってしまい、気づくとプリンタのインクコーナーで足を止めていた。ある値札に目が釘付けになっていた。


え、純正インク6色組が3990円?これは安いぞ。


エコリカを買おうとしたら、なぜか純正品がそれより安かったので、驚いてしまったのだった。


プリンタを安く売って、インクで儲ける二階建て商法をやめたのだろうか?いやそれにしてもこれは安いな。これは買いだ!・・・とつい浮かれてしまい、その価格に疑問を持つことなくレジへ直行。CD-Rとプリンタ用印画紙と一緒に、会計。浮かれていた自分は、しかし次の言葉で我に帰った。


「6814円になります」


え?と思った。耳を疑った。5500円くらいだと思ってたのに。高すぎる。しかし、精算しないわけには行かない。納得いかず首を傾げつつ、仕方なく支払いを済ませた。


そして渡されたレシートを見てみると、インクの値段が5400円くらいと書かれていた。これが原因だった。


どうして?さっきは3990円の15%オフって言ってたのに・・・。


もう一度インクコーナーに戻ってみて、やっと事態を理解した。


確かに、自分が見本の「空箱」を取ったところには「3990円」という値札が付いていた。しかしそこはその「空箱」とは別のインクの場所だったのだ。よく見るとそこに置かれた箱たちは、図柄は同じだが自分の取った「空箱」より小さかった(4色組)。そして近くにはその「空箱」が本来あるべきスペースがあり、そこには「5985円」という値札がかかっていた。非常に分かりづらいだろうか。


つまり、誰かが置き場を間違えて「空箱」を本来とは別の場所に戻してしまい、それを見た自分が値段を勘違いしてしまったというわけだ。非常に間抜けなミスだった。


どだい、エコリカより純正品が安いなんてことがあるわけが無かった。そこに疑問を持てば、安易に高い買い物をしないで済んだのだ。そもそも黒インク以外は買う気は無かった。


大学で「物事を疑い真実を見極める目」を養ったつもりだったが、このように買い物に関してはときに理性的になれない場合もある。買い物は難しい。昔からつまらないものを買い損ばかりしてきた。


今後はもっと冷静に買い物をしよう、それが今回の教訓だ。

(80分)