原子力エネルギー利用の環境負荷削減効果について

自分の知識、思考、スタンスの整理と明確化のために、以前レポートとして書いた文章を転載しておく。
パソコンのHDDなどいつクラッシュしてもおかしくないので、とっておくべき情報はネット上に残しておくべきだと考えたためだ。
この文章の中の主張は、その科学的、理論的な背景がきちんと理解された上で書かれたものではないので、一つの妄言だと思って欲しい。

今後もブログを頭の整理用途で使うこともあると思うので、そういう前提でご理解とご協力を。





私は、原子力エネルギーの利用は環境負荷の削減のためには役立たないと考える。むしろ原子力は、二つの次元において、環境負荷の増大に寄与するのである。

以下では原子力発電を例に、原子力利用の環境負荷の大きさについて論じることとする。


第一に、原子力は利用の際に廃熱による熱汚染を引き起こす。
原子力は近年、CO2を排出しないエネルギー源だとして、温暖化抑止の一手段として注目されている側面があり、実際にウラン235核分裂反応時のエネルギーを利用するという意味ではCO2とは関係がない。
しかし、核分裂の際に生じるのは熱エネルギーであり、これを電力に変換して利用する以上、どうしても熱の全てを人間にとって有用な形で利用することは出来ない。必ず廃熱という損失が生じてしまう。それは熱力学第二法則から言って明らかで、どれだけ効率を高めようとしても限界がある。
現在の最新技術を用いた火力発電(コンバインドサイクル発電)においては、熱効率は60%ほどまで向上してはいるが、原発においてはずっと低く30%ほどと言われている。こうして利用できなかった廃熱は、廃水や蒸気といった形で自然界に放出される。このため、原発は海水の温暖化といった効果をもたらし、結局はCO2の排出と同様の影響を環境に対して与えてしまうこととなる。
また核燃料が原発に届くまでの、ウラン鉱石の採掘、精錬・加工、運搬といった一連の過程においては、当然ながら大量の化石燃料由来のエネルギーが投入されなければならないのであり、その点においては原子力がCO2の排出を伴わない発電手段だということさえも出来ないのである。


第二に、原子力放射能という他のエネルギー源にはない弊害をもつ。
一般に、現在マスコミで最もよく取り上げられ、政府や企業や国民が関心を向け(させられ)ている環境問題といえば、地球温暖化問題であり、その原因として槍玉に挙げられているのは専らCO2である。
しかし植物により吸収され、海中に沈殿するなどして自然界で循環するCO2は、生物にとっては直接「毒」として作用するものではない。大気中の量の多少が問題なのであり、全くなくなってしまえば、逆にそれは地球の生態系を崩壊させることになる。
一方で、原子力発電で核燃料として利用されるウランと、その核分裂後に発生する様々な放射性物質が持つ放射能は、生物にとって明らかに有害なものである。
炭素14など生物の中にもわずかながらに存在してはいるが、人間の活動によらなければウラン235の濃縮や急速な核分裂などありえないため、自然界の作用ではそれらは浄化されず、また利用する人間自身もその毒を無害化したり、絶対的に隔離したりする術をもちあわせていない。
せいぜい85年ほどしか発電に利用できない原子力のために、人間のみならず地球上のあらゆる生命に、長きに渡って多大な負の遺産を残すことは、環境負荷の削減という目的に対しては正反対の結末だと言わざるを得ない。


以上の理由から、私は原子力の利用は積極的に環境に負荷を与えるものであると考えるのである。

(08/11/25、原文転載、10分)