読書:今日は死ぬのにもってこいの日


原題:MANY WINTERS
著者:Nancy Wood (原著)、Frank Howell (画)、金関 寿夫 (翻訳)
発行:1995年9月(原書は1974年)



ネイティブアメリカンであるプエブロ族の古老たちの詩や散文を、彼らの肖像画と共におさめた一冊。







4月にAmazonマーケットプレイスで買った中古本。
何がきっかけで買ったかはよく覚えていない。
途中にしおりをはさんだまま放置されていたので、今日一時間ほどかけて読みきった。


彼らの見ている世界が、リフレインを用いたシンプルな詩から、生き生きと伝わってきた。
彼らの自然に対する深い畏敬の念は、大地、空、星、月、太陽、水、、火、四季、動物、虫・・・ありとあらゆるものに向けられていて、その営みを見つめる目は悠久の時の中を漂うかのよう。
つまり彼らは宇宙を見ているのだ。
生き死にを繰り返し続く生命の円環、その大きな流れを見つめているのだ。
その言葉の波に漂いながら、自分も時の流れを忘れて、この世界の営みの奇跡とに思いを馳せたのだった。


いつもは新書か小説くらいしか読まないのだが、たまにはこういう本を読んで、実用とか単純な娯楽とかにとらわれずに、生きていることの不思議さや自然の偉大さについて考えてみるのもいいものだ。


ネイティブアメリカンのものの見方が、日本の八百万の神っていう価値観と似ているなと、一瞬思った。
だけど、むしろ逆で、一神教のほうが後発かつイレギュラーな存在なんであって、多神教が普遍的であることに気づいた。
それゆえ、日本人にとっても身近で共感しうるのものでありえるのだと思う。
もちろん彼らが自然の真理に触れているということでもあるかもしれない。


書名は収録された詩の一節がもとになっているが、「死は終末ではなく、新たな生の始まりである。冬のあとには春が訪れるように」という、死を終わりと捉えず、物事の循環として円環的に捉える彼らの価値観を示している。
そういう大きな営みの一部として自分の人生を捉えることができれば、小さなことにくよくよせず、悠々と生きることもできるんじゃないかな。
そんなふうに思った。

(60分)