ユーミン

清水寺で発表される毎年恒例の「今年の漢字」が「輪」に決まって、自分を含む多くの自転車乗りが「えっ!なに?自転車のこと?」と一瞬目を丸くした、昨日。自宅周辺では朝から雪が降りしきり、辺り一面が白く染まって景色が一変した。市内での今年の初雪はすでに11月12日に観測されているが、あのときは市街地でみぞれとあられが少し積っただけだったし、家の周りでは積らなかった。だから、きちんと雪らしい雪が降ったという意味では、自分としては昨日こそが初雪というのが実感だった。タイヤ交換はすでに済んでいたので、通勤時はスピードを控えめにした以外はふだんと変わらない調子で車を運転できた。ただ、ワイパーを冬用のスノーブレードに交換するのを忘れていたのに気が付いたので、あとで交換しなければと思ったのだった。




先々週あたりからだと思うのだが、仕事中も家でも、松任谷由実ユーミン)のある曲が頭の中でエンドレスループの状態になっている。その曲とは、彼女のデビュー曲の「ひこうき雲」である。机に向かっている時や廊下を歩いている時、風呂に入っている時などに、自然と「♪空に憧れて〜」という歌詞とメロディが流れ始めると、心がどこかに持って行かれそうな気持ちになる。ユーミンの曲は、アルバムを2枚ほど持っているので、これまでにも色々と聴いていた。だが、この曲の雰囲気、というか世界観は、ほかの曲と比べてすごく異彩を放っているように感じられてならない。ユーミンが16歳の時に友人の死をきっかけに作ったというこの曲は、短くシンプルな歌詞とメロディの中に、彼女のみずみずしい感性が溢れだしている。聴いていてこれほどまでに、心に曲のイメージ、情景が思い浮かぶような曲というのはなかなかないし、世界観が単純ではないだけに、何度聴いても、いや聴けば聴くほどに、深い味わいがあると感じる。16歳でこんな楽曲を創造することが出来たなんて、本当に天才少女というしかない。アーティストとして40年のキャリアを持つユーミンに対して、1973年のデビュー曲を取り上げて絶賛するのはその後の積み重ねを否定するかのようで、少し失礼なことかもしれないが、しかし自分が聴いたユーミンの数々の曲の中で、一番今の自分の心に染みたのは、この「ひこうき雲」だったのだ。今年、この曲は宮崎駿監督の「風立ちぬ」で使われて再びブレイクしていたようだが、自分がこの曲に取りつかれるようになったきっかけは、11月22日放送のNHKのSONGSという番組でユーミンが特集されていて、番組の中で演奏されたのを聴いたことだった。それ以来、自分の心は日に十数回ほど、現実を抜けだしてはユーミンの世界に飛んで行くのである。二つの世界を行き来する生活は、当面終わりそうにない。

(55分)