金環日食

九州南部から関東にかけての広い範囲で金環日食が観測出来た今朝の7時半ごろ、自分は新幹線の車内にいた。空は晴れており、窓から上空を見上げれば、(部分日食かもしれないが)太陽が月に隠れる様子を見られたかもしれなかった。全国各地では、体育大会の代休で休みだった大勢の子どもたちが、古代の日本人が天照大神の岩戸隠れだと考えた神秘的な現象に、じっと目を凝らしていたことだろう。しかし自分はその時、出張のために4時半に起床した反動で、強烈な眠気にノックダウンを食らっていた。そのせいで、肝心のタイミングを逸してしまい、意識を取り戻したときにはすでに天体ショーの幕は閉じた後だった。残念ではあったが、そもそも観測用の黒メガネは持っていなかったし、3年前の皆既日食の時ほどの真剣さはなかったため、まあ仕方ないと気持ちを切り替え、また気を失ったのだった。


NHKのニュースによれば、次に日本の広い範囲で金環日食が観測出来るのは、2312年だそうだ。そのころにはすでに宇宙世紀が始まっているはずだから、日食なんて「だからどうした」レベルの扱いになっていることだろう。今回、日食が完全にリングになったところと、三日月形に欠けたところの境界線、すなわち限界線を調べることにより、太陽の正確な大きさを測定しようという試みが行われたそうだが、その調査結果によっては、将来的にソーラレイコロニーレーザーが作られるときの設計上の最大出力も変わってくることもありうる。最新の科学技術の成果は真っ先に軍事的用途に利用されるのが世の常だ。ロマンでもあり、一抹の恐怖でもある。今年は天体観測の当たり年で、金星が太陽の前を横切るイベントも起こるらしい。だが、日食に比べると極めて地味なので、多くの黒メガネが明日の朝、燃えるゴミとして収集車に放り込まれ、はかなく燃え尽きる末路を辿ることになるに違いない。その悲しい運命には、わずかばかり同情してしまう。


それにしても、今夜のニュースウォッチ9の井上アナは美しかった。肩の高さに切り揃えた髪型がよく似合っていたし、笑顔がひときわ輝いて見えた。スタジオで一緒に仕事をしていた大越キャスターに少しだけ嫉妬した。…なんて、自分らしくもないことを考えてしまった。今夜はちょっと飲み過ぎたようだ。明日の用務に寝坊しないように、さっさと風呂に入って寝るとしよう。

(45分、携帯)