調整役

事務の最大の仕事は、学内の調整であるといってもいい。特に、個性豊かで自己主張の強い教員の方々に、大学の方針を理解してもらい、その実現に向けて動いてもらうために、説得しお願いする役割が非常に重要なものとなっている。こうした仕事はどの部署でもやっていることであろうが、自分の部署では特にその占める割合が高い。自分も、教員に何かをお願いするときには、その方法や言葉選びに非常に神経を使うし、メールの文章を打ちながらどうやって書こうか悩んで手が止まってしまうことも少なくない。あいまいなことを書いて誤解を生んだり、依頼が一方的だという印象を持たれたりすることがあってはならないので、慎重にならざるを得ない。というのも、一度教員の機嫌を損ねてしまうと、非常に仕事がやりづらくなってしまうのである。教員のやる気を喚起し、協力を取りつける方法は、なかなかこれというコツがあるものでもなく、難しい。教員との個人的な信頼関係が形成されるとやりやすくなるのだろうが、それは何年も仕事をして地道に獲得していくものだから、自分にはまだ使えない。教員と事務の微妙なパワーバランスについては、まだまだつかみ切れていない部分が多いのが実情である。大学という同じ組織に属していながら、見ているもの考えていることは違っているし、完全に身内といえる間柄でもない。大学っていうのは、つくづく変わった組織だと思う。自分は業務量の多さに忙殺されることはないが、こうした状況下で対応に苦慮することは少なくない。加えて事務同士での人間関係というのもある。なので、この職業を志望している人にはあんまり「薄給だけどお気楽な仕事」だと思って目指してほしくはない。そういう認識でいると、実際仕事を始めてからギャップに苦しむことになるかもしれない。自分としては、人をほめて励ましたり、人を巻き込んで何かを起こしたりするのがうまい人、気持ちの切り替えが早く何か言われてもへこたれない人、明るく快活でエネルギッシュな人に来て欲しい(つまり自分と正反対の人ということ)。旧態依然な感が否めない組織にあって、そういう人はまだまだ少ないから、絶対重宝されるし、活躍できること間違いなしだ。大学は今、そういう若い力を必要としているのである。

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