赤黄色の

去年から、「キンモクセイってどんな木なんだろう、どんな香りがするんだろう」とずっと興味を持っていた。フジファブリックの「赤黄色の金木犀」という曲を大好きになったことの影響である。今秋も、キンモクセイに思いを馳せていたのだが、たまたま家族の会話を聞いたことから、意外に近いところにその木が生えていることを知った。その場所とは、自分の家の庭であった。予想だにしていなかったが、でもこれは幸運なことだった。朝、出勤前に庭に赴き、木の前に佇むと、その姿に目を凝らし、すーっと息を吸い込んでみた。




橙色の花に彩られた木からは、うっすら甘くいい香りがして、曲と一緒に、この木のことも好きになった。その後、大学に通勤してみると、大学の中にもキンモクセイが咲いているのに気付いたし、昼休みに外を歩いたら、ところによっては木は見えないながらふわーっとキンモクセイの香りがただよってきて、何だか急にこの木が身近に感じられるようになった。


こんなふうに、季節ごとに移り変わる草木に思いを至らせ、それを愛でる心というものを、自分も持てたらいいなと思う。自分の考える豊かな生活というのは、社会や人と関わることを考える心と、自然や哲学、歴史など浮世とは一歩距離を置いた世界のことを考える心とを、どちらかに強く傾くことなく、バランスよく両方を持ち続けながら生きていくものである。中長期的な目標として、こんな生活を志向していきたいと思う。

(30分)