読書:世界は分けてもわからない


著者:福岡伸一
出版社:講談社
発売日:2009/7/17
読了日:2009/12/18



図書館の新刊コーナーで見かけて一日で読んだ本。


著者は分子生物学者だが、小説みたいに修辞が巧みに使われた文章で、そこがまず驚きだった。主軸となるのは著者の研究しているタンパク質の話ではあるのだが、それはあくまでテーブルに過ぎず、その上に置かれた料理は多種多彩。村上春樹の小説の一節も引用されていた。それぞれが無関係なようでありながら、それぞれが繋がっていて、それらを結びつける着眼点の巧みさにもまた驚かされた。


でも、何なんだろう、この本は。読み終わった後直後の感想は「わからない」というものだった。この本をどういう言葉で表現すればいいか、その内容がとどのつまり何を示すのか、わからなかった。読んでいて面白かった(途中、一部説明が細かすぎ専門的すぎて困惑した部分もあったが)し、「バラバラに見えるいろんなことは全て繋がっている。一部を見ているだけでも、全体を俯瞰して見ているだけでも物事を正しく判断することは出来ない」みたいなことかな、と思ったりはしたけれど、そんな軽々しく一言にまとめて片付けていいようなものではないように感じた。初めて映画「攻殻機動隊」を見たときと同じような気分だった。ただ、「何なんだろう、これは」と立ち尽くすばかりで。それは決して悪い意味ではなく、あまりにもスケールが大きくて、思いがけない出来事にあっけにとられてしまったということだ。


一読しただけではとてもこの本のことをあーだこーだ言えそうにないのでこの程度にしておこう。もしかすると、万人向けの本ではないかもしれない。でも自分は何らかの影響を受けたように思うし、それはポジティブな方向性を持ったものだと捉えている。著者の書いていたことは、というか著者の展開した世界は、自分のゼミの教授のそれに似ていた。色々な思考・主張が一つの明確な方向性を持って有機的に連結していて、首尾一貫した一つの世界を持っている・・・自分は教授の話を毎回ゼミで聴かされる中でそう感じ、憧れていた。マクロ的にもミクロ的にも矛盾のない一つの世界観を持っていることが、頭がいいってことなのかな、と思った。教授は東大卒、著者は京大卒。やっぱり頭のいい人たちは伊達じゃない。そんな人たちと同じ考え方など出来ようはずも無いが、少しでも近づきたいと思って、自分は日々色んな本を雑食している。少なくとも自分の進むべき方向性への確信は、この本を読んだことで深まった。今はそういうことにしておこう。

(40分)