読書:地震の日本史

著者:寒川旭
出版社:中央公論新社
発売日:2007/11
購入日:2008/5/19
読了日:2009/11/12



新聞の読書欄(っていうのかな?あれ)で紹介されていて、興味を持ち購入した本。


内容は、歴史書の記述や、大地に刻まれた地震の痕跡の研究を元に、地震という観点から日本の歴史を読み解くという斬新なものである。古代から現代までの各時代の地震と、それが当時の社会に与えた被害や影響が、歴史的な事件と寄り添う形で丹念に記述されており、読み応えがある。


本書を読むと、日本全国で有史以前からいかに多くの地震が起きて来たかという事が良く分かる。そして日本には揺れない場所はないこと、各地で甚大な被害を与えてきた地震は、日本の歴史とは切っても切れない深い関係にあることも。


本書で知り驚かされたこと、印象に残ったこととしては以下のようなものがある。
○世界初の地震計は中国の後漢の張衡(ちょうこう)が西暦132年発明した「地動儀」
○古代には地震は為政者の失政により起こると考えられており、地震発生後に免税が行われることが度々あった
○日本の歴史書に最初に「地震」の記述が登場するのは日本書紀で、416年8月23日の大和国地震
ナマズ地震が結びつけられている最初の記述は安土桃山時代の秀吉への手紙
○全国の歴史的建造物も地震で何度も破壊されてきた(それだけの千数百年間元の形をとどめているものは極めて稀少な存在)
地震で消えた町、出来た湖(川が出来とめられて)は多い
地震による破壊で復興需要が生まれたり、富者が財産を失って社会が平等化したりするなど、地震には経済活性化の側面もあった
○江戸時代にも地震の被災者に対する藩や幕府の救済措置(食料の供与、貸付など)は行われていた
地震で社会に混乱が起こり権力者が暗殺された事件もあった
○10万人以上の死者行方不明者を出した関東大震災は、それまでの地震に比べずば抜けて被害が凄まじい
○戦時中も千人以上の死者を出す大きな地震があったが、報道規制が敷かれていたため表ざたにされなかった


このほかにも、新潟での江戸時代以降の地震の事例もいくつか掲載されており、郷土への歴史理解を深める意味でも、とても価値のある内容だと感じた。


日本列島に暮らす限り、誰しも一生に一度や二度、大きな地震に巻き込まれる危険にさらされている。専門知識がなくても読める内容なので、ぜひこうした書籍を手にとって、地震に対する認識と危機感を深めてみてはどうだろうか。

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